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KIT、新材料レアアース分子からの光

May, 26, 2022, Karlsruhe--量子コンピュータやネットワークに有望な特性を持つ新材料が発見された、KIT研究者が、Natureに発表した。

光を使い量子情報を迅速、効率的、セキュア、盗聴不能に供給する。カールスルーエ工科大学(KIT)、ストラスブール大学、Chimie ParisTech、フランス国都立研究センタCNRSの研究者は、光で量子情報を処理するための材料開発で大きな進歩を達成した。Natureで、研究チームは、核スピンを持つユーロピウム分子を紹介している。これにより、効果的なフォトンスピンインタフェースが作製可能になる。

量子情報は、研究や産業ばかりか、われわれの日常生活も変革する。中でも、材料やプロセスのシミュレーションでは途轍もない進歩を約束する。これは、新しい医療材料の開発、バッテリの改善、輸送計画、セキュアな情報通信を促進する。量子ビット(qubit)は、0と1の間に多くの異なる状態を同時に仮定する。この、いわゆる量子重ね合わせは、膨大なデータの並列処理を可能にする。結果として、量子コンピュータの計算能力は、デジタルコンピュータと比較して、飛躍的に向上する。しかし、計算操作を行うには、qubitの重ね合わせが、一定時間持続しなければならない。量子研究では、これはコヒレント寿命と言われている。分子の核スピン、つまり原子核の角運動量が、長いコヒレント寿命の重ね合わせ状態を可能にする。核スピンが、環境から十分に遮蔽されており、外部の影響からqubitsを保護するからである。

効果的な光/核スピンインタフェース
 「実用的なアプリケーションには、われわれは量子状態を蓄積、処理、分配できなければならない」とMario Ruben は言う。同氏は、KIT量子材料と技術研究所(IQMT)長。量子化学欧州センタ、ストラスブール大学CESQ、分子量子材料グループ長。「このために、われわれは、今回、有望な新しいタイプの材料を特定した。核スピンを含むユウロピウム分子である。ユーロピウムは、レアアース金属に属する」。

分子は、レーザ励起で発光するように構造化されている。これは、核スピン情報を持つフォトンをそれが放出すると言う意味である。特殊レーザ実験により、効果的光/核スピンインタフェースが生成可能になる。研究成果は、フォトンの助けを借りた核スピンレベルのアドレッシング、フォトンのコヒレントストレージ、初の量子オペレーションの実行をカバーする。

高密度qubits
 有用な量子オペレーションを実行するには、量子力学でエンタグルされた多くのqubitsが必要になる。このためにqubitsは相互作用しなければならない。Karlsruhe、StrasbourgとParisの研究者は、分子のユウロピウムイオンが電気漂流電界により結合できることを証明した。したがって、これは未来のエンタングルメント、即ち量子情報処理を可能にする。分子は、精確な結晶における原子精度と配列で構造化されているので、高いqubit密度が達成できる。実用的アプリケーションに関わるもう1つの側面は、個々のqubitsのアドレス指定可能性である。光アドレッシングが、読み出し速度を向上させ、給電干渉が防げる。周波数分離により、多くの分子の個別アドレス指定が可能になる。以前のプロジェクトと比較して、ここで報告された今回の成果は、分子材料で約1000倍優れた光コヒレンスを達成している。こうして、核スピン状態が特殊な方法で光学的に操作可能になる。

量子インターネットへのステップ
 光は、より長い距離にわたる量子情報の分布、量子コンピュータを接続し、情報の安全な転送にも適している。これは、将来、フォトニック構造に遷移を強化する新しいユウロピウム分子を組み込むことで達成される。「われわれの研究は、量子インターネットの基礎として、レアアース分子を持つ量子通信アーキテクチャへの重要な一歩である」とDavid Hunger, IQMTは話している。
(詳細は、https://www.kit.edu)