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家庭の医療診断テスト向けにスマートフォン活用マイクロチップを開発

May, 24, 2022, Minneapolis--ミネソタ大学(University of Minnesota)の研究チームは、病気診断向けに新しいマイクロ流体チップを開発した。これは、最小数のコンポーネントを使い、スマートフォンでワイヤレス給電可能。そのイノベーションは、高速、より安価な家庭医療テストに扉を開く。

マイクロ流体は、微小量の液体の研究と操作に関わる。その分野で最も普及しているアプリケーションの1つは、lab-on-a-chip技術の開発。非常に小さな生体サンプル、例えば血液あるいは尿から病気を診断できるデバイスの実現可能性。

研究成果は、Nature Communicationsに発表された。研究チームは、その技術の商用化にも取り組んでいる。

研究者は、ある症状の診断、例えばCOVID-19病原検査用のポータブルデバイスをすでに持っている。しかし、より高度な診断チップの設計には大きな障害がある。例えば、COVID-19の特殊株を特定、あるいはグルコース、コレステロールの様なバイオマーカーの計測ができる診断チップの設計は、非常に多くの可動パーツが必要になることが障害となっている。

このようなチップでは、液体を内部に封じる材料、液体を操作するためのポンプと管組織、そのポンプを動かす配線が必要になる。全ての材料はマイクロレベルに縮小することが難しい。ミネソタ大学のチームは、嵩張るコンポーネントの全てをなくして機能するマイクロ流体デバイスを作製することができた。

「最先端のマイクロ流体lab-on-a-chipシステムを集積することが極めて労働集約的であることは、誇張ではない。われわれの考えは、カバー材料、配線、ポンプの全てを捨てて、それをより簡素にできるのか、と言うものであった」と、電気・コンピュータ工学教授、論文のシニアオーサ、Sang-Hyun Ohはコメントしているる。

多くのlab-on-a-chip技術は、チップで液滴を動かして、ウイルス病原体、バクテリアをサンプルで検出することで機能する。「研究チームのソリューションは、特殊な実世界の現象からヒントを得た。ワインドリンカーならよく知っている、「レッグ」つまりワインボトル内に形成される長い液滴である。これは、アルコールの蒸発を原因とする表面張力で形成される。

Ohのラボで開発された技術を使い、研究チームは、微小な電極を2×2㎝チップの近傍に置いた。これが強い電界を生み出し、それがチップから液滴を引き出し、内部の分子を検出するための液体の類似「レッグ」を作る。

電極は、非常に接近して設置されているので、その間のスペースはわずか10nm。結果としての電界は、非常に強いので、チップは1V以下の電気で機能する。この信じられないような低電圧要件により、研究者は、スマートフォンからの近距離無線通信信号を使ってチップを活性化できる。同じ技術は、店での非接触支払いに使用されている。

研究者が、スマートフォンを使って、マイクロ流体構造なしでナローチャネルをワイヤレスで活性化できたのはこれが初めてである。これは、安価、より利用しやすい家庭診断デバイスへの道を開く。

「これは、非常に素晴らしい新しいコンセプトだ。大規模、高密度製造で、われわれは、この高度な技術をより手頃な価格で家庭診断デバイスにできる」と研究の筆頭著者、Christopher Ertsgaardは、話している。

Ohのラボは、ミネソタのスタートアップ企業、GRIP Molecular Technologiesと協働して、そのマイクロチッププラットフォームを商用化する。同社は、家庭用診断デバイスを製造している。チップは、液体サンプルにウイルス、病原菌、バクテリア、他のバイオマーカーを検出するための幅広いアプリケーションとなるように設計されている。

「商用で成功するには、家庭内診断は低コスト、使いやすくなければならない」とGRIP Molecular Technologiesの創始者/社長、Bruce Battenは、話している。「Ohのチームが開発したような低電圧流体移動により、われわれはそれらの要件の両方を満たすことができる。GRIPは、われわれの技術プラットフォームの開発で、幸運にもミネソタ大学と協働してきた。基礎研究、橋渡研究を結びつけることは、革新的、変革的製品のパイプライン開発には極めて重要である」と同氏はコメントしている。
(詳細は、https://twin-cities.umn.edu)