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ガン細胞は自らのDNAを破壊し、放射線ダメージ修復の時間稼ぎをする

May, 18, 2022, Ottawa--ヨーロッパとカナダの研究チームは、ガン細胞が制御された可逆的な方法で自身のDNAを破壊することを発見した。これは、放射線治療中に起こる大きなDNA損傷を修復するための時間稼ぎである。Scienceに発表された研究は、カスパーゼ活性化DNA分解酵素(CAD)という酵素が、このプロセスで重要な役割を担い、新しいガン治療の開発で、有望な目標となることを示している。

「CADが放射線治療からガン細胞を守る方法は、素晴らしいものであり、予想外である」とデンマークのBiotech Research & Innovation Centre (BRIC)助教、論文のシニアオーサ、Dr. Claus Storgaard Sørensennoは話している。「本来なら、放射線は、広範囲に染色体を破壊する、DNAを破壊することでガン細胞を殺す。しかい、放射線は、CAD活動のスイッチを入れる。これは、DNAに独自の、限られた損傷を起こす。つまりガン細胞は、成長を止める信号として、それを認識する。この成長ストップ信号が起こると、ガン細胞は、この機会を利用して、すべての壊れたDNAを修復し、その成長を再開する。基本的にガン細胞は、DNA損傷の制御された形態を利用して、放射線による損傷をバイパスし、修復する。

オタワ病院のシニア研究者、カナダのオタワ大学の教授、Dr. Lynn Megeneyは、Dr. Brian Larsen(論文の主筆)、Dr. Ryan Bellとともにこの研究で重要な役割を担った。

「この発見は、生物学的、臨床的に極めて素晴らしい。過去に、われわれはCADを研究していた。このタンパク質のかなり異常な機能を指摘した。つまり、筋幹細胞の成長を促進するためにDNA損傷を方向付ける。しかし、この新発見は、全く革命的である。ガン細胞がDNA破壊のためにCADを配置する、つまり、放射線治療に続くいっそう厳しいDNA損傷から細胞を保護する。ガン細胞からCADを除去することでわれわれは、ガン細胞が放射線治療の影響をさらに受けやすくすることができる。

Dr. Sørensenによると、その現象は、ガン細胞独特であるので、臨床的には一段と重要度が増す。

「CADは、ガン細胞に放射線治療後の細胞分裂を遅らせるように指示する。これは:健全な細胞では起こらない。CADに制御されないからである。したがって、CADを阻止できることが分かっているので、われわれの発見は、ガン細胞のみを標的にするのに役立つ。CAD阻止のための進行中の開発は、より精確な処置になると考えられるので、放射線治療の副作用量を低減する」と同氏は説明している。

その新研究の背後の研究者は、CADを阻止する処置法をすでに開発している、その効果は、簡単なラボテストで証明されている。しかし、放射線治療を受ける人々でCADを阻止する実際の薬剤への道は長い。

「5年以内に人で最初のテストをする。しかし、まず製薬会社の関与が必要である」(Dr. Sørensen)。

(詳細は、https://www2.uottawa.ca)