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Science/Research 詳細

フェムト秒ロジックゲートで超高速コンピューティング

May, 17, 2022, Nürnberg--Friedrich-Alexander-Universität Erlangen-Nürnberg(FAU)とロチェスタ大学の研究者は、レーザを使うことで、将来、基本的なコンピューティング操作のスピードが、どのように100万倍高速にできるかを証明した。研究成果は、Natureに発表された。

今日のコンピュータとスマートフォンプロセッサのコンピューティング速度は、FETによるものである。より高速のデバイスを製造する競争で、これらのトランジスタサイズは、チップに可能な限り多くが載るように絶えず小さくなっていく。現在のコンピュータは、すでに驚嘆するような数GHz速度で動作する。つまり1秒に数十億の計算動作だ。最新のトランジスタは、サイズが0.000005㎜、わずか数原子相当。チップメーカーが行けるところには限界があり、ある点で、トランジスタを小さくできなくなる。

光の方が高速
物理学者は、光波でエレクトロニクスを制御しようと取り組んでいるが、難しい。光波の振動は、約1fs、1秒の1000兆分の1。光で電子信号を制御すると未来のコンピュータは、100万倍高速になる、ペタヘルツ信号処理、つまり光波エレクトロニクスが目標だ。

光波から電流パルス
エレクトロニクスは、バイナリーロジック(1と0)を使って、信号やデータを論理情報の形式で移転、処理するように設計されている。

Chair of Laser Physicsの研究者は、光波をどのように電流パルスに変換できるかを数年間、研究してきた。実験では、研究者は、グラフェンと金の電極を超短レーザパルスで照射する。レーザパルスは、グラフェンに電子波を誘発し、これが金の電極に進み、そこでは電流パルスとして計測され、情報として処理できるようになる。

リアル電荷とバーチャル電荷
レーザパルスが表面のどこに当たるかによって電子波の広がり方が異なる。これが2つのタイプの電流パルスを生成する、リアル電荷とバーチャル電荷として知られている。

「グラフェンがプールで、金の電極がオーバーフロー機能付ボールだと考える。水の表面が乱されると、一部の水がプールから溢れ出る。リアル電荷は、プールの中央に石を投げるようなものである。生まれた波がプールの縁に届くと直ぐに水は溢れる、正にグラフェン中央でレーザパルで励起された電子のようである」と論文の主筆、Chair of Laser Physics研究者、Tobias Boolakeeは説明している。「バーチャル電荷は、波が形成されるのを待たずにプールの端から水をくみ取るようなものである。電子では、これは、感知できないほど速く起こる。それがバーチャル電荷として知られる理由である。このシナリオでは、レーザパルスはグラフェンのエッジ、金の電極の直ぐそばに方向付けられる」。バーチャル電荷とリアル電荷の両方は、バイナリロジック(0と1)として解釈できる。

レーザによるロジック
FAUの物理学者は、この方法が論理ゲート、コンピュータプロセッサの重要素子の動作に使えることを初めて実験で実証することができた。ロジックゲートは、入力バイナリ情報がどのように処理されるかを制御する。ゲートは、2つの同期レーザパルスで励起された2つの入力パルスを必要とする、ここではリアルおよびバーチャル電荷からの電子波。2つの波の方向と強さにより、結果としての電流パルスは集合されるか消去されるかのいずれかである。物理学者が計測する電子信号は、バイナリ、0または1として解釈ざる。「これは、基礎研究が、新技術の開発にどのように行き着くかの好例である。基礎理論とそれを実験に関連付けることでわれわれは、リアルとバーチャル電荷の役割を明らかにした。これは、超高速ロジックゲートを実現する方法を開く」とロチェスタ大学のIgnacio Francoは、コメントしている。「この技術が、コンピュータチップで使われるまで、恐らく時間はかかる。しかし、少なくともわれわれは、光波エレクトロニクスが実現可能な技術であることを知っている」とTobias Boolakeeは話している。
(詳細は、https://www.fau.eu)