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X線発光の新原理を利用、放射光を使った磁石の奥まで透ける顕微鏡

February, 8, 2022, 東京--量子科学技術研究開発機構(量研)量子ビーム科学部門関西光科学研究所の菅原健人技術員、稲見俊哉上席研究員、JFEテクノリサーチ株式会社西日本ソリューション本部の中田崇寛主査、機能材料ソリューション本部の阪口友唯主査、高橋真主査は、X線の新しい磁気光学効果「X線磁気円偏光発光」を導入することにより、磁性体深部にある磁区の大きさ、向きの詳細な分布の観察できる、磁気顕微鏡の構築に世界で初めて成功した。モーターや変圧器の省エネルギー化に必須となる電磁鋼板の性能向上に貢献できる。

 磁石などの磁性材料はわれわれの生活の様々な場所で活用されている。電磁鋼板もその一つで、モーターや発電機、変圧器などに広く用いられているが、これらの電力–動力、電力–電力変換の際には磁性材料の中に形成された磁区(小さな磁石が同じ向きを向いて集団となっている領域)が動くことによりエネルギーの損失が生じる。その損失は、日本全体で見ると一般的な家庭およそ600万軒分の電力消費量にも相当すると推計されている。従って、より損失の小さな磁区構造を持った電磁鋼板が開発できれば、大きな省エネルギー効果を生み出すことになる。

 電磁鋼板のエネルギー損失には磁区の分布が深く関わっており、表面から内部に渡って形成された鋼板全体の磁区構造を知ることが重要になる。しかし、これまでの磁区を観察するための顕微鏡は200~300µmの厚さがある電磁鋼板の表面1µm程度までの深さしか観察することができず、鋼板全体の磁区構造は他の研究から想像するにとどまっていた。このような状況のもと、研究グループは、その一員である稲見上席研究員が平成29年に発見したX線磁気円偏光発光を利用し、X線の高透過能によってこれまでの磁気顕微鏡より一桁以上の深さ、およそ数十µmの奥深くまで透けて観測することができる磁気顕微鏡を大型放射光施設SPring-8の量研専用ビームラインBL11XUに構築し、電磁鋼板の磁区観察に成功した。エネルギー損失の鍵となる中の領域にまで磁区構造の観測が届くようになったことで、電磁鋼板の低損失化への大きな一歩を踏み出すことになる。

 今後は、より深い領域の観察、深さ分解測定、測定の高速化により、中まで含めた磁性材料の磁区構造を三次元的に観察する手法の開発に取り組む計画である。これにより、例えば、電磁鋼板の低エネルギー損失化を達成し、大きな省エネルギー効果、あるいは、高効率モーターの実現や自動車電動化の推進など、われわれの将来に直結した貢献が見込まれる。

 研究成果は、米国物理学協会Journal of Applied Physics 誌のオンライン版に掲載されました。

(詳細は、https://www.qst.go.jp)