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データセンタを救う超高速光スイッチング

November, 12, 2021, Lausanne--EPFLとMicrosoft Researchの研究者は、チップベースソリトンコムレーザと完全パッシブ回折格子デバイスを使って超高速光回路スイッチングを実証した。この特別なアーキテクチャは,将来の膨大なデータ帯域要求に応えるエネルギー効率のすぐれた光データセンタを可能にする。

Microsoftのような、全てのハイパースケールクライドプロバイダのサービスは、数十万のサーバを利用する巨大なデータセンタから供給されている。このようなサーバのパフォーマンスは、それらのネットワークの品質に大きく依存している。現在のデータセンタネットワークは、光ファイバで相互接続された多層の電気パケットスイッチを含む。これらのシステムは、電気と光の変換を必要としており、これはコストと電力のオーバーヘッド増となる。さらに事態を悪化させるのは、AIやデータ分析のようなアプリケーションで増加するデータレートが、ムーアの法則の減速と同時に起こること。これにより電気チップ依存の現在のネットワークアーキテクチャを効率的に拡張するのが極めて困難になる。

光回路スイッチ(OCS)は、データセンタにおける帯域問題と拡張問題を克服する素晴らしいオプションとして登場してきた。特に有望なOCSアーキテクチャは、波長スイッチングである。異なるサーバが異なる光波長を使って接続され、よりフラットなネットワークアーキテクチャが出現し、電気スイッチと光トランシーバの利用を制限する。多様な光波長と目的のサーバにルーティングする光信号のスイッチングは、スイッチング素子で実行される。例えば異なる波長を分散によって分離できるガラスプリズムである。

OCS技術は、今日商用利用可能であるが、それらは極めて低速であり、オーバーヘッドを減らし、消費電力を改善するようにネットワークリソースを適切に利用しながら、極めてバースト的なデータセンタアプリケーションに対処できない。

Nature Communicationsに発表された新しい論文で、EPFLのTobias J. Kippenberg教授、 Microsoft Research Cambridge のDr Hitesh Ballani atをリーダーとする研究チームは、チップベースオプティクスを使ってデータセンタ向け超高速OCSの実証に成功した。研究チームは、2018年以来、Microsoft Swiss Joint Research Centerの一貫として協働している。

提案されたアーキテクチャでは、光マイクロコムがコヒレントキャリアを供給する多波長光源として動作する。半導体材料ベースの光増幅器とAWGsが、異なる光波長をそれぞれスイッチングし分離し、結合する。

Kippenbergのグループが開発した光マイクロコムは、多くのアプリケーションに適した数百の等間隔キャリアを持つ。マイクロコム光源は、チップスケールシリコンナイトライド(SiN)マイクロプロセッサを利用して非線形周波数変換により生成され、従来多波長光源として用いられたレーザアレイに対してパワーとサイズで固有の優位性がある。

SiNマイクロ共振器は、フォトニックダマシンプロセスを利用して製造される。これはCMOS適合技術の1つであり、超低伝搬損失が特徴。この点は、パワー効率マイクロコム光源実現には極めて重要である。

チップスケールInPベース光増幅器は、商用ファンドリで製造され、サブnsタイムスケールで異なる光波長間のスイッチングを行う。異なるマイクロコムキャリア間のこの超高速スイッチングは、現代および将来のデータセンタアプリケーションの性能要件達成にとって重要である。

概念実証、システムレベルデモンストレーションは、パケット毎のスイッチングによるデータ転送が達成可能なことを示しており、したがって、データセンタアプリケーションの要件を満たすことができる。さらに、研究チームは、パワー効率を改善し、複雑さを低減するセントラルコムシステムを利用する独自のアーキテクチャを紹介している。

「ソリトンマイクロコムは、2014年以来、多くの重要なシステムレベルアプリケーションで利用されてきた。LiDAR、長距離データ伝送、光コヒレントトモグラフィ(OCT)。未来の帯域要求に応え、電力消費を減らすためにデータセンタでマイクロコムの利用は、科学的および技術的アプリケーション向けにこのプラットフォームの重要性をさらに確固たるものにすることになる」(Kippenberg)。
(詳細は、 https://actu.epfl.ch)