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高速レーザ書込法、CDサイズガラスディスクに500TB詰め込み

November, 2, 2021, Washington--UKサウサンプトン大学の研究者は、シリカガラスに高密度ナノ構造を生成するために高速でエネルギー効率の優れたレーザ描画法を開発した。これら微小構造は、長期5次元(5D)光学データストレージに利用できる。これは、Blu-ray光学ディスクストレージ技術よりも10000倍高密度である。

「個人や組織がこれまで以上に大きなデータセットを生み出しており、大容量、低エネルギー消費、長寿命のより効率的なデータストレージ形式の切実な必要性が生まれている」とUKサウサンプトン大学の博士課程学生Yuhao Leiは説明している。「クラウドベースのシステムは、より多くの一時データのために設計されているが、ガラスの5Dデータストレージは、国立アーカイブ、博物館、図書館、あるいは私的組織のための長期データストレージに役立つ」。

Opticaに発表された論文で、研究チームは、新しいデータ書き込み法を説明している。これは、2つの光学次元と3つの空間次元を包含するものである。新しいアプローチは、1000000 Voxtel/secのスピードで描き込むことができ、これは約230㎅/secに相当する。

「われわれが利用する物理的なメカニズムは一般的である。したがって、このエネルギー効率よい書き込み法も、3D集積オプティクスやマイクロ流体アプリケーション向けの透明材料における高速ナノ構造化に利用できると期待している」とLeiはコメントしている。

より高速、優れた書き込み
透明材料における5D光データストレージは、以前に実証されているが、実世界アプリケーション向けのデータ書き込みの十分な高速性、高密度は、難しいことがわかっている。このハードルを克服するために研究チームは、高繰り返しレートのフェムト秒レーザを使い、それぞれがわずか500×50nmのシングルナノラメラのような構造を含む微小ビットを作製した。

ガラスへの直接書き込みにフェムト秒レーザを使うよりも、研究者は近接場増強として知られる光学現象を生成するために光を利用した。ここでは数個の弱い光パルスでナノラメラのような構造が、シングルパルス小爆発によって生成される等方性ナノボイドから作られる。ナノ構造作製に近接場増強を利用することで、高繰り返しレートのレーザを使う他のアプローチで問題となっていた熱損傷を最小化した。

ナノ構造は異方性であるので、それらは複屈折を作る。これは、光の遅軸方位(4次元、ナノラメラライクなナノ構造に相当)とリターダンス力(5次、ナノ構造のサイズによって規定される)によって特徴付けることができる。データはガラスに記録されるので、遅軸方位とリターダンス力は、それぞれ光の偏光と強度で制御可能である。

「この新しいアプローチは、データ書き込み速度を実用的なレベルに改善するので、われわれは妥当な時間に数十GBのデータを書き込める」とLeiは説明している。「高度に局在化された精密ナノ構造により、データ容量増が可能になる。単位体積に書き込まれるボクセルが多くなるからである。加えて、バルス光を使うことで書き込みに必要なエネルギーが少なくなる」

ガラスCDにデータを書き込み
研究チームは、新しい方法を使って、従来のコンパクトディスクサイズのシリカガラスティスク5GBのテクストデータを書き込んだ。読出し精度はほぼ100%だった。各ボクセルは4ビット情報を含んでおり、2ボクセルごとに1テクスト文字に相当する。その方法で利用可能な書き込み密度で、ディスクは500TBのデータを保持できる。研究チームによると、並列書き込みができるようにシステムをアップグレードすると、このデータ量を約60日で書き込み可能である。

「現在のシステムでは、テラバイトのデータを保持できる。これは、例えば個人のDNAからの情報の蓄積に利用可能である」と研究チームリーダー、Peter G. Kazanskyは話している。

研究チームは現在、その方法の書き込み速度向上、その技術をラボ外で利用可能にすることに取り組んでいる。実用的なデータストレージアプリケーションには、より高速のデータ読み出し法の開発も必要になる。
(詳細は、“High speed ultrafast laser anisotropic nanostructuring by energy deposition control via near-field enhancement,” Optica, 8, 11, 1365-1371 (2021).)