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生体内脳深部イメージングを可能にする新しい顕微鏡技術

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October, 15, 2021, Heidelberg--EMBLのPrevedelグループが開発した先駆的技術により、神経科学者は、脳深部の生きたニューロンを見ることができる。また、不透明組織内に隠されたいかなる他の細胞も見ることができる。同技術は、2つの先進的顕微鏡法、3-光子顕微鏡と補償光学(AO)をベースにしている。研究成果は、Nature Methodsに発表された。

その新技術が開発されるまでは、神経科学者が、大脳皮質の深い層にアストロサイトがカルシウム波を生成するのを観察すること、あるいは海馬の他の神経細胞を可視化することは困難だった。海馬は、空間記憶やナビゲーションに関与する脳の深部領域。その現象は、全ての生きた哺乳類の脳で定期的に起こる。新技術を開発したことで、Lina Streichと同氏の協力者は、前例のない高分解能でこれらの多様な細胞の細部を捉えることができた。国際機研究チームには、ドイツ、オーストリア、アルゼンチン、中国、フランス、米国、インド、ヨルダンの研究者が含まれる。

神経科学では、脳組織は、主に小さなモデル生物、あるいは観察のためにスライスする必要がある体外サンプルで観察される。両方とも、非生理的状態である。正常な脳細胞活動は、生きた動物でのみ起こるが、「マウスの脳は、極めて散乱的な組織」(Roberty Prevedel)である。「これらの脳では、光が細胞成分と相互作用するので、光の集光は極めて難しい。これが、鮮明な画像をどの程度深く生成できるかの制約となる。また、従来技術では脳内の小さな構造に焦点を合わせることは非常に難しい」。

Streichは、4年を超える研究でこの問題を解決し、今では、その成果により研究者は、組織深部を見ることができる。

「従来の蛍光脳顕微鏡技術では、2光子が、毎回蛍光分子によって吸収される。照射によって起こる励起が小容積に閉じ込められることを確認できる。しかし、フォトンが先へ行けば行くほど、散乱によってフォトンが失われる確率が高くなる」とPrevedelは説明している。「これを克服する1つの方法は、フォトンを励起する波長を赤外の方へ増やし、それによって十分な励起エネルギーが蛍光体によって確実に吸収刷れるようにすることである。加えて、2光子の代わりに3光子を使うことで脳深部でより鮮明な画像が得られるようになる。しかし、もう1つの課題が残っている。画像全体がぼやけないように、フォトンを確実に集中させることである。

これは、Streichのチームが利用した第二の技術が重要なところである。適応光学(AO)は通常天文学で用いられている。2020年、ブラックホールの発見でRoger Penrose, Reinhard Genzel and Andrea Ghezのノーベル賞受賞で重要であった。天文物理学者は、デフォーマブル、コンピュータ制御ミラーを使って、大気乱流によって生ずる光波面の歪をリアルタイムに補正する。Prevedelのラボでは、歪は、不均一な組織の散乱によって起こるが、原理および技術は非常に似通っている。「われわれはアクティブ制御デフォーマブルミラーを使用する。これは、波面を最適化して、光が集中し、脳深部にも焦点を結ぶようにする」と同氏は説明している。「われわれは、脳の生きた細胞で使えるように高速化する特別なアプローチを開発した」。その技術の侵襲性を低減するために、チームは、高品質画像達成に必要な計測数を最小化した。

「これらの技術が統合されたのは、これが初めてである。また、それにより、われわれは、生体の生きたニューロン最深部の画像を高解像度で示すことができた」(Steich)。EMBL Rome、ハイデルベルク大学と協働した研究者は、海馬のニューロンを繋ぐ樹状突起や軸索までも可視化したが、脳は完全に無傷のままである。

「これは、さらに進んだ、生きた細胞を研究する非侵襲的技術の開発への飛躍である」(Streich)。その技術はマウスの脳で利用するために開発されたが、どんな不透明組織にも容易に適用できる。「動物を犠牲にする必要なく、また重なる組織を除去することなく、生体組織を研究できるという明確な利点の他に、この新技術は、動物を長期に研究する、つまり病気の始まりから終わりまでを研究する道を開く。これは、組織や臓器で病気がどのように発達するかについて研究者の理解を深める強力な手段となる」とStreichは離している。
(詳細は、https://www.embl.org)