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MIT、新世代微小な敏捷ドローンを開発

August, 26, 2021, Cambride--蚊などの昆虫は、飛行では極めてアクロバティックであり、回復力に富んでいる。そのような特性は、突風、障害物、一般的不確定性のある空中世界を昆虫がナビゲートする際に役立っている。そのような特性は、飛行ロボットに組み込むのは難しいが、MIT准教授、Kevin Yufeng Chenは、昆虫の敏捷さに迫るシステムを構築した。

同氏は、前例のない機敏さと障害耐性を備えた昆虫サイズのドローンを開発した。その空中ロボットは、新しいタイプのソフトアクチュエータで動作するので、実世界飛行の物理的労苦に耐えることができる。同氏は、そのロボットがいずれ、作物に花粉をつける、あるいは窮屈な空間で機械の点検を行うなど、人間の役に立つと見ている。

研究成果は、IEEE Transactions on Roboticsに発表された。

一般に、ドローンは広い空間を必要とする。限られた空間をナビゲートするほどの敏捷さがなく、混雑の中で衝突に耐えられるほど堅牢でもないからである。「今日のほとんどのドローンを見ると、普通は、それらはかなり大きい。そのアプリケーションのほとんどは、屋外飛行に関与する。問題は、非常に複雑で、雑然とした空間を飛び回れる昆虫スケールのロボットが作れるかである」(Chen)。

同氏によると、「小型飛行ロボットの構築課題は、計り知れない」。小型ドローンは、基本的に大型ドローンとは異なる構築技術を必要とする。大型ドローンは通常、モーターで動くが、モーターは、サイズが小さくなると効率が低下する。よって、昆虫サイズロボットでは、代替技術を探す必要がある。

今までのところ、主要な代替技術には、圧電セラミック材料でできた小型で、堅いアクチュエータを採用している。圧電セラミックによって第一世代小型ロボットは飛び立つことができたが、非常に壊れやすい。また、昆虫を真似てロボットを構築する際、それは問題である。例えば、餌採マルハナバチは、毎秒1回程度の衝突に耐えられる。

Chenは、堅くて脆いものの代わりに柔らかなアクチュエータを使い障害耐性の高い微小ドローンを設計した。ソフトアクチュエータは、カーボンナノチューブで被覆された薄いゴムシリンダでてきている。カーボンナノチューブに電圧を印加する、静電力を発生し、ゴムシリンダを縮小、伸長させる。反復的伸長と縮小によりドローンは高速に羽ばたく。

Chenのアクチュエータは、1秒に約500回羽ばたくことができ、ドローンは昆虫のような障害耐性がある。「飛行中にそれを叩くことができるが、それは、回復する。また空中で宙返りのような積極果敢な操作ができる」と同氏は説明している。その重量は、わずか0.6グラム、ほぼマルハナバチの質量である。そのドローンは、見たところ、翅付の小さなカセットテープであるが、Chenは、トンボのような形状の新しいプロトタイプに取り組んでいる。

「センチメートルスケールのロボットによる飛行は、素晴らしい偉業である。ソフトアクチュエータ固有の適合性により、そのロボットは、安全に障害物に突っ込むことができるが、飛行が大きく阻害されることはない。この特徴は、雑然とした、動的環境に適しており、どんな実世界のアプリケーションにも極めて有用である」とコーネル大学電気・コンピュータ工学教授、Farrel Helblingはコメントしている。同氏は、この研究には関与していない。

さらに同教授によると、そのようなアプリケーションへの重要な一歩は、そのロボットが動力配線から解き放たれることである。現状、それは、アクチュエータの高い動作電圧を必要としている。

昆虫のようなロボットの構築は、昆虫の飛行の生物学、物理学を知る手段となり得る。これは研究者にとって長年の探求の道である。Chenの研究は、一種のリバースエンジニアリングを通してこうした問題に対処する。「昆虫の飛行方法を知りたければ、縮小ロボットモデルを造ることが役立つ。2、3撹乱を与えて、それが運動学にどう影響するか、あるいは、流体力がどのように変わるかかを知ることができる。そうしたことが飛行方法の理解に役立つ」。しかしChenは昆虫学の文献に付け加える以上のことを狙っている。同氏のドローンは、産業や農業にも役立てることが可能である。

同氏によると、微小エアリアリストは複雑な機械をナビゲートして、完全性や機能性を確認することができる。「タービンエンジンの検査では、閉じられた空間にドローンを飛ばし、小型カメラでタービンプレートの亀裂をチェックしてみたくなる」(Chen)。

他の潜在的アプリケーションには、作物の人工授粉、災害後の探査とレスキューミッションの実行。「そうしたことの全てが、既存の大型ロボットには極めて難しい」(Chen)。時には、大きいことはいいことではない。
(詳細は、https://news.mit.edu)