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ユタ大学、ノイズをカットして優れたソーラセル実現

August, 25, 2021, Utah--ユタ大学とヘルムホルツェントルムベルリン(Helmholtz-Zentrum Berlin)の物理学者は、ソーラセルを改善する方法を考案した。

新しい研究で物理学者は、相互相関雑音分光学として知られる技術を使って,シリコン太陽電池内部で材料間を流れる電流の微少変動を計測した。研究チームは、従来のノイズ計測法には全く見えない重要な電気ノイズ信号を特定した。そのノイズ源となりそうな物理的プロセスも正確に示すことができた。これは、エネルギー損失になり、高率を低下させることがある。

「物体のノイズを計測することは比較的簡単である。そのためのデバイスを購入するだけでよい。しかしわれわれを悩ます問題は、これらのデバイスにもノイズがあることだ。この相互相関雑音分光学によりわれわれはデバイスのノイズだけでなく、われわれのディテクタのノイズも計測し、著しく小さなノイズ信号となるように、それを除去することができる」と論文の筆頭著者、Kevin Daveportは説明している。

Scientific Reportsに発表した技術は、重要な新しいツールである。これにより、一段と優れた太陽電池となるように材料界面を改善し、他の複雑なデバイスの非効率を分析することができる。

「産業にとって、効率のわずかな改善がいかに重要であるかは、驚嘆に値する。わずか数%の改善が,量産では、数十億ドルになる」と共著者、Klaus Lipsは話している。同氏は、Freie Universität Berlinの物理学教授。Helmholtz-Zentrum Berlin学部長。そこでは太陽電池が設計、製造されている。

「過去において、われわれは相互相関雑音分光学を利用して、極めて容易に研究グレードLEDsを調べていたが、その方法の利点がこの研究で日の目を見た。それは、ソーラ産業の範囲を超えている。多層デバイスはどれでも、材料間の各界面で効率がある程度低下する。それは非常に複雑であるので、何が起こっているか、さらに重要なことだが、その特殊ノイズがどこで起こっているかを指摘できるようになるには、極めて慎重にならなければならない。この技術により、われわれは、正にそれができるようになったのである」と物理学教授、jAndrey Rogachevは説明している。

最新の研究でよくあるように、複雑なデバイスの理解は、単一の方法では十分ではなかった。ノイズデートの解釈は、Helmholtz-Zentrum Berlinポスドク研究者、C.T. Trinhが行ったソーラセルシミュレーションが大いに役立った。

ノイズの分析
「研究は、シリコンヘテロジャンクションソーラセル(HSCs)を分析した。これはハイエンドタイプ単一材料ソーラセルであり、現在、この種のものでは市場で最も高効率、セルに入ってくる光の26.7%を電気に変換する。それに対して、住宅の屋根のソーラパネルのセルは,15%~20%の変換効率である。

HSCでは、個々の光粒子、フォトンが、結晶シリコンでできた光活性層で吸収されるときに、電気生成が始まり、負電荷の電子と正電荷のホール(失われた電子を原因とする電荷)のペアを生み出す。電子とホールは、不純物で変更された水素化アモルファスシリコンでできた2つの選択的接触によって生まれる電界によって反対方向へ引き裂かれる。このプロセスが、われわれが電気として利用する電流を生み出す。問題は、選択的電極と光活性シリコンが完全に一致しないこと、これが電子をトラップする欠陥を生み出す。この研究のように研究グレードソーラセルでこれらの欠陥を除去するために、研究者は、それらの間にピュアアモルファスシリコンの超薄層を入れる。最後に、これら5層の全てが、ITOとして知られる透明電動材料と金の電極の間にサンドイッチされる。

HSCsの効率は、異なる層が相互にいかにうまく結合しているかに依存している。2層間のわずかなミスマッチで、電子は行くべきところへ行くのが難しくなる、つまりノイズ信号を生み出す問題である。

「問題は、これらの界面内部に隠されているようなものである。また、個々の信号が極めて小さいので、いかなる信号も検出が実に難しくなっている」とDavenportは説明している。同氏によると、様々な楽器が生み出す音を聞いているようなものである。バイオリンのC-note(ド)は、チェロのC-noteと同じであるが、それらは違って聞こえる。その音を分析すると、それを生み出す楽器についての知識を引き出すことができる、ストリングの長さ、材料など。

「われわれは、それと同じことをしている。この幅広いスペクトルの異なるノイズ信号、周波数軸に沿った異なる位置を見ている。“音のこの部分は、この物理的プロセスに、こちらの部分は別の物理的なプロセスによるものだ”と言える。しかし、すべてがノイズを生成するので、デバイスは、それらのもつれを解くことが極めて難しいプロセスでいっぱいである。200人のコーラスから一人の人の声を取り出すようなものである。この技術によりわれわれは、信号から多くの不要な部分を除去することができる」。

非効率をマッピング
シリコンHSCsは、そのままで優れているが、まだ制約がある。研究チームの新技術は、特定の物理的プロセスが電気信号を生み出すデバイスの重要エリアを特定した。将来的に、これらの段階における微調整が、これらのセルの効率を改善し、未来のソーラセルを改善する。関連する信号を見つけるために電気的ノイズを取捨選択した後、研究チームはシミュレーションを行って、信号の局所でどんな物理的プロセスが起こっているかを特定した。

次世代ソーラセルは、タンデムセルとして知られている。それぞれ太陽光の異なる部分に感度があるフォトボルテイック材料のスタックである。これによりデバイスは、より多くのエネルギーを生成できる。提案されている一つのデバイス層は、ホットティケットペロブスカイト材料である。

「それとともに、新しいソーラセルは、それ自体でシリコンデバイスの限界を打破する。効率が30%を超える」とLipsは話している。

効率のこの限界では小さな損失が重要になる。材料科学者は、そのような損失の一つを観察した。透明ITOの堆積が、下層のシリコン層を何らかの形で変更し、デバイスの効率を低下させる欠陥を作り出す。研究者がこの研究で突き止めたその主要な電気ノイズ信号の一つは、この界面にある。そこでは、電荷がトラップされて放出される。別の主要な信号が起こるのは、ホールがデバイスの裏面の類似の障壁を透過するときである。

これらの信号を検出できることは、われわれがその源を理解し、それらを緩和できるということである」とDavenportは話している。

(詳細は、https://www.physics.utah.edu)