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lab-on-a-chip向けに回転マイクロフィルタを3Dプリント

August, 5, 2021, Washington--中国科技大学の研究者は、マイクロ流体デバイス内で粒子を選別するために使える磁気駆動回転マイクロフィルタを作製した。研究チームは、2光子重合化として知られる非常に精密な3Dプリンティング技術を使い磁気材料を作製することで微小回転フィルタを作った。

マイクロ流体素子は、lab-on-a-chipとしても知られており、通常数㎝㎡程度のチップ内で多数の研究室機能実行に使用できる。これらのデバイスは、マイクロ流体チャネルの複雑なネットワークを含んでおり、ますます複雑になってきている。それは、治療の可能性のための分子選別、病気発見のための血液検査など、様々なアプリケーションに使える。

「外部磁界の方向を変えることで、われわれが作製したマイクロフィルタは、オンデマンドで遠隔操作でき、一定サイズの粒子を選別したり、それら全てを通したりできる」と研究チームのDong Wuは説明している。「この機能は、lab-on-a-chipデバイスで実行される多くの種類の化学的、生物学的研究に利用できる。重要な点は、チップは再利用ができることである」。
 
Optics Lettersに発表された研究で合肥工業大学と理研(RIKEN Center for Advanced Photonics)の研究チームは、新しいロータリーマイクロフィルタが、マイクロ流体デバイスの粒子を高性能分類できることを示している。

「このフィルタは、最終的に様々なサイズの細胞の分類に使用できる。アプリケーションは、周回する腫瘍細胞を分析のために隔離する、あるいは病気を示唆する異常に大きな細胞を検出すること。さらなる開発で、それはガン検出のために体内に設置するデバイスで使用することさえ可能」と中国科学技術大学、Chaowei Wangは説明している。

さらに多用途のフィルタ
マイクロメートルサイズの穴を持つフィルタは、穴のサイズをベースにして粒子、細胞をパッシブに分類する方法としてマイクロ流体チップで利用されることがよくある。しかし、フィルタの穴の数や形状がダイナミックに変えられないので、利用できるデバイスは、様々な種類の粒子、細胞をオンデマンドで分類する柔軟性が欠如している。マイクロ流体デバイスの有用性を拡大するために研究チームは、選択的フィルタリングと通過などのモード間の自由な切替えができるフィルタを開発した。

研究チームは、2光子重合化を使い新しいフィルタを作製した。これは、集光フェムト秒レーザビームを使い、フォトレジストとして知られる液体感光性材料を固化、つまり重合化する技術。2光子吸収ににより、重合化は、極めて高精度に実施することができ、ミクロンスケールで複雑な構造の製造が可能になる。

マイクロフィルタを作製するために、研究チームは磁気ナノ粒子を合成し、それをフォトレジストと混合した。ロータリーマイクロフィルタの作製は、重合化のために利用するレーザパワー密度、パルス数、スキャニングインタバルを最適化することが必要だった。その磁気駆動特性をガラススライドでテストした後、チームは、そのマイクロフィルタをマイクロ流体デバイスに組み込んだ。

複数のフィルタリングモード
より大きな粒子を選別するために、マイクロチャネルに対して垂直に磁界を印加する。フィルタリングプロセスが完了すると、大きな粒子が、マイクロチャネルに対して並行な磁界を印加することで放出される。マイクロチャネルは、マイクロフィルタを90°回転させる。そのフィルタリングプロセスは、必要に応じて反復可能である。

研究チームは、アルコール溶液と混合した、直径8.0µmと2.5µmのポリスチレン粒子を使い、そのフィルタのフィルタリング性能を評価した。「穴サイズよりも小さな粒子は容易にマイクロフィルタを通過し、大きい粒子は、フィルタリングアウトされることが明確になった。通過モードでは、フィルタによって捉えられた大きな粒子は、液体とともに洗い流された。これは、フィルタの詰まりを防ぎ、マイクロフィルタの再利用を可能にする」と中国科学技術大学のChenchu Zhangは話している。

研究チームは、マイクロフィルタがサイズによって細胞を分類するために使用できるように、その最適化を行う計画である。成功すると、チームは、この技術を、最終的に体内のアプリケーションに適用することができる。体液は、アルコールよりも高粘度であるので、高フローレートを維持し、細胞がチャネル、つまりフィルタに付着することを防ぐためにマイクロチャネルの構造を設計し、表面処理を行う必要がある。