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超短レーザパルスを使って光電子放出の動力学をプローブ

July, 28, 2021, Munich--マックスプランク量子オプティクス研究所(MPQ)とルートヴィヒマクシミリアン大学(LMU)の物理学者は、物質の電子構造が、それと光との相互作用にどのように影響するかを調べた。

光が物質に当たり、その電子が通り過ぎると必ず後を残す。いわゆる光電効果では、光粒子(フォトン)は、物質に吸収され、束縛電子が励起される、あるいは完全に放出される。このプロセスの長さは、その物質の電子構造に影響される。これは、多数の電子間の複雑な相互作用によって生まれる。Max Planck Institute for Quantum Optics (MPQ) and the Ludwig Maximilians University of Munich (LMU)の物理学者は今回、これを一段と詳細に調べた。研究チームは、タングステン結晶における光子放出でこの電子バンド構造の効果を計測し、理論的に解明した。

100年前、アルバート・アインシュタインが受賞したノーベル賞は、一般相対性理論ではなく、光電効果の説明、光量子使用の理論的説明であった。MPQとLMUの物理学者は今回、この現象をさらに詳しく研究した。今日、アト秒技術により、光電子効果の時間シーケンスの観察ができる。これには、ストロボスコープと同様、アト秒の超短X線パルスを利用する。

光電分光実験では、物理学者は、アト秒X線光フラッシュをその結晶に送り込んだ。各放出閃光には数百フォトンがあり、その各々が光電子を生成する。研究チームは、結晶外部のディテクタで電子を捉え、その通過時間と放射角度を分析した。

結晶では、フォトンが衝突した電子が相互作用に反応するには短い時間が必要であることを研究チームは実証することができた。これが成功したのは、研究チームが新しいアプローチをアト秒パルス生成まで追求しようとしているからである。片勾配共振器は、1秒に1840万アト秒X線閃光を可能にする、これは、同等システムで以前の事例の1000倍以上である。結果的に、光電子は、空間的、時間的に相互に分離されている。「光電子が相互に反撥しあい、したがって相互にその運動エネルギーを変える。可能な限り多くのアト秒閃光に光電子が分布されていることが重要である」とDr. Tobias Saule、研究の筆頭著者は説明している。粒子が相互作用することはなく、最大エネルギー分解能は保持される。こうして,研究チームは、価電子帯の異なる軌道角運動量、すなわち結晶の原子の外軌道の近接状態からの電子が、非常に小さな、しかし計測できる時間遅延、数十アト秒をフォトエミッション中に、入射フォトンが届くまで、示すことを確認できた。

しかし、成果は他にもある。物質の構造、すなわち、その原子の整列も光電子放出時間に影響を持つ。「結晶は、核がプラスに帯電した多数の原子でできている。したがって、電子を惹きつける電位となる。へこみの中の大理石のようなものである」とDr. Stephan Heinrichは説明している。同氏は、論文の筆頭著者。「電子が結晶を通って進むと、へこみがある平坦ではないテーブルの上を大理石が転がるようなものである。へこみは、結晶における個々の原子の位置であり、規則的に配置されている。大理石は、その経路に影響され、フラットなテーブルの上とは異なる動き方をする。われわれは、結晶内部のそのような周期的ポテンシャルが、光電放出のタイミングにどのように影響するかを示し、説明することができた」と同氏は話している。この場合に観察された遅延は、内部から固体表面までの電子の輸送経路によるものである、また生ずる散乱と相関効果によるものである。

「初めて、われわれの成果が、固体における多電子系の複雑な相互作用プロセスの実験的探求と理論的理解の機会をわれわれに与えてくれた」とプロジェクト責任者、Ulf Kleineberg教授はコメントしている。

将来、これらの成果は、最適化された電子特性、最適化された光と物質の相互作用、たとえばより効率的フォトボルテイック(PV)セル、超高速信号処理向けナノ光コンポーネント、バイオメディカルにおけるナノシステム向けなど、新しい材料の開発に役立つ。
(詳細は、https://www.mpq.mpg.de)