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隠された高速移動物体の撮像に無線信号を利用

July, 20, 2021, Gaithersburg--NISTsWavsens LLCの研究チームは、無線信号を使って、隠された動く物体のリアルタイム画像およびビデオを作成する方法を開発した。これは、消防士が逃げ道を見つけたり、火と煙に満たされた内部の犠牲者を見つける際に役立つ。その技術は、ミサイルや宇宙のゴミなど、超音速物体の追跡にも役立つ。

Nature Communicationsに発表された新方法は、死者や怪我人を減らすために役立つ重要情報を提供できる。室内の第1応答者を見つけ、追跡することは、公共の安全にとって主要な目的である。周回する数十万の宇宙のゴミは、人や宇宙船にとって危険であると考えられている。

「われわれのシステムにより、曲がり角、壁を通してリアルタイムイメージングができ、高速移動物体の追跡ができる。例えば、10km/secで飛行するミリメートルサイズの宇宙のゴミは、1時間に20000マイル以上移動するが、全て離れた距離から追跡できる」と物理学者、Fabio da Silvaは説明している。同氏は、NISTで研究しながら、同システムの開発を主導している。

「われわれは無線信号を使うので、信号は、コンクリート、乾式壁、木材やガラスなど、ほぼ全てのものを透過する。それは非常に巧妙である。壁の背後を見ることができるだけでなく、画像フレームの作成にわずか数ミリ秒しかかからない。サンプリングは光の速度であり、物理的に可能な速さだ」とSilvaは付け加えた。

NISTのイメージング法は、レーダーの変種。電磁パルスを送り、反射を待つ。往復時間計測して標的までの距離を決定する。マルチサイトレーダーは、1つのトランスミッタと複数のレシーバを持つ。エコーを受信し、三角測量により物体を見つけ出す。

「われわれは、マルチサイトレーダーコンセプトを利用したが、われわれの場合、多数のトランスミッタと1つのレシーバを使う。その方が、空間のどこでも、反射するものは何でも見つけ出しイメージングできる」とSilvaは説明している。

Da Silvaは、特許を申請し、先頃NISTを離れて、スタートアップWavsens LLCを設立し、そのシステムをm-Widarとして商用化する。

NISTチームは、無響室でその技術を実証した。乾式壁の背後を動く人に関わる3Dシーンの画像を作成した。トランスミッタパワーは、12台のセルフォーン相当。同時に信号を送信して、約10mの距離で、ウォールボードを通して画像を生成した。

Da Silvaによると、現在のシステムは、最大数kmまでの能力がある。改善により、距離はもっと延びるが、トランスミッタパワーとレシーバ感度が制限要因である。

基本技術は、過渡レンダリングとして知られるコンピュータイメージングの1つ。これは2008年以来、画像再構成ツールとして利用されている。考えは、信号計測の小さなサンプルを使い、ランダムパターンと相関性に基づいて画像を再構成する。同技術は、以前に、通信コーディング、ネットワーク管理、マシンラーニング、一部の先進的イメージング法で利用されていた。

Da Silvaは、信号処理と他の分野からのモデリング技術を統合して、画像を再構成する新しい数式を作った。個々のトランスミッタは、特定タイプのランダムシーケンスで、様々なパルスパターンを同時送出する。これは、空間的時間的に、他のトランスミッタからのパルスと干渉し、画像を構成する十分な情報を生成する。

送信アンテナは、マイクロ波を含む無線スペクトルの上半分200MHz~10GHzの周波数で動作した。レシーバは、信号デジタイザに接続された2つのアンテナで構成されている。デジタル化されたデータは、ラップトップに送られ、画像再構成のためにGPUにアップロードした。

NISTチームは、その方法を使って、1秒に15億サンプルでシーンを再構成した。対応する画像フレームレートは、366kHz(fps)。比較すると、これは、携帯電話ビデオカメラの100~1000倍多いフレーム/秒となる。

12アンテナでNISTシステムは、4096ピクセル画像を生成、解像度は、10mシーンで約10㎝。この画像解像度は、感度つまりプライバシーが懸念される場合、有用である。しかし、その解像度は、既存技術を使ってシステムをアップグレードすることで改善可能である。これには、送信アンテナを多くする、高速のランダム信号生成およびデジタイザが含まれる。

将来的には、量子エンタングルメントを使うことで改善可能。ここでは、個々の無線信号が連結される。エンタングルメントが感度を改善できる。無線周波数量子イルミネーションスキームが受信感度を高める。

新しいイメージング技術は、無線信号の代わりに可視光伝送にも適用可能。超高速レーザが、画像分解能を強化するが、壁を透過することはできない。あるいは、ソナーや超音波イメージングアプリケーション向けに音波にも適用できる。

緊急事態や宇宙のゴミのイメージングに加えて、新方法は、衝撃波の計測にも利用できる。これは、爆発物評価のための主要指標。また、心拍や呼吸などバイタルサインのモニタにも使える。

(詳細は、https://www.nist.gov)