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Science/Research 詳細

UC Berkeley、ダイヤモンドで光学顕微鏡とMRIの両方でイメージング向上

June, 22, 2021, Berkeley--光学顕微鏡で、研究者は細胞内、組織のサブミクロン解像度の構造を見ることができるが、光が散乱しないように浸透できる深さはミリメートル程度。MRIは、身体の至る所へ届く高周波を使うが、その技術の解像度は低く、ミリメートル程度であり、光よりも1000倍低解像度である。

UC Berkeleyの研究者は、顕微ダイヤモンドトレーサが、MRIと光蛍光からの情報を同時に提供できることを示した。これにより研究者は組織下1㎝までの高品質画像が得られる。光だけと比べと、10倍の深さである。

観察に2モードを使うことで、その技術は高速イメージングも可能にする。

その技術は、体外の細胞や組織の研究、病気の化学的マーカーに血液、他の液体のプロービング、あるいは動物の生理学的研究に特に有用である。

「これは、同一物体がオプティクスとMRIで同時に撮像できる初のデモンストレーションである」とUC Berkeley、化学准教授、Ashok Ajoyは言う。「組み合わせて撮れる情報量は多い。2つのモードは、その部分を合計するよりも優れている。これは、多くの可能性を開く。媒体でこれらのダイヤモンドトレーサを数桁加速できるからだ」。

Proceedings of the National Academy of Sciencesに発表されたその技術は、比較的新しいタイプの生物トレーサ、マイクロダイヤモンドを利用している。一部の炭素原子を追い出し、窒素で置き替えることで結晶に空孔を残したマイクロダイヤモンドは、レーザ光を受けると蛍光を発する。

Ajoyは、炭素の同位元素、炭素-13 (C-13)を利用する。これは、ダイヤモンド粒子の中に約1%の濃度で自然に存在するが、その優勢な炭素原子の多くを、さらに炭素-12で置き換えることもできる。偏極C-13核は、MRIの中核技術、核磁気共鳴(NMR)で一層強い信号を生み出す。

結果的に、これらの過分極ダイヤモンドは光学と高周波の両方で検出できる。光学的には蛍光窒素空孔中心、高周波ではスピン偏極炭素-13による。これにより、利用できるベストの技術2つで同時イメージング可能になる、特に可視光を散乱する組織内深部を見る際に恩恵を受ける。

「光学イメージングは、組織深くに入り込むと、劣化する。1㎜超でも、光散乱は大きい。これが主要な問題である。ここでの利点は、同一のダイヤモンドトレーサを使ってイメージングが、高周波と光で実行できることである。体内のイメージングに使用しているMRIの同一バージョンをこれらのダイヤモンド粒子のイメージングに使える。光蛍光シグネチャが完全に散乱していてもである」(Ajoy)。

核スピンの検出
Ajoyは、分子同定の極めて正確な方法であるNMR改善に焦点を当てている。また、その医療イメージングの片方、MRIにも注目しており、コスト低減と装置サイズの縮小が目的である。NMRとMRIの1つの限界は、サンプル、体内の分子の核スピンの整列、つまり偏極には、大きく、強力で、高コストの磁石が必要なことである。これは、無線パルスで検出できるようにするためである。しかし、画像が改善されることは分かっているが、一度に多くのスピン分極を得るために必要な高い磁場に人は耐えられない。

これを克服する1つの方法は、検出したい原子の核スピンを調整すること。目的は、その多くが、ランダムではなく、同一方向に整列するようにすることである。より多くのスピンが整列し、いわゆる過分極になると、無線検出される信号が強くなるので、弱い磁石を使うことができる。

最新の実験では、Ajoyは、安価な冷蔵庫の磁石に相当する磁界と、安価なグリーンレーザを利用して、マイクロダイヤモンドの結晶格子で炭素-13原子を分極した。

「これらの粒子に光を照射すると、そのスピンを極めて高度に調整できる、MRI装置のスピン配列よりも3から4桁高い。従来の病院MRIsは、磁界1.5Teslaを利用しているが、これと比べて、1000テスラ磁界にあるように効果的に偏極されている」(Ajoy)。

ダイヤモンドが、例えば、蛍光トレーサでよく利用される抗体によって、細胞、あるいは組織の特別な箇所に向けられると、過分極C-13のNMRイメージング、およびダイヤモンドの窒素空孔中心の蛍光の両方により検出可能である。窒素空孔中心ダイヤモンドは、その蛍光だけでトレーサとして、すでに広く利用されるようになっている。

「われわれは、これらダイヤモンド粒子の1つの重要な、クールな特徴を示した。スピン偏極するという事実である。したがって、ダイヤモンド粒子はMRIマシーンで非常に明るく発光する。しかし、光学的に蛍光も発する。それらにスピン偏極を与えるのと同じことが、それらに光学的に蛍光を放出させるのである」。

Ajoyによると、ダイヤモンドトレーサは、安価であり、比較的利用しやすい。それに、これらの新しい開発は、将来的に、全ての化学者のベンチップへの安価なNMRイメージングマシーンの設置につながる。今日、大病院だけが、数百万ドルのMRIsを導入できる。同氏は、現在、NMRとMRIを改善するために別の技術に取り組んでいる。これに含まれるのは、他の分子を過分極するために過分極ダイヤモンド粒子の利用である。

(詳細は、https://news.berkeley.edu)