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Science/Research 詳細

CUHKとWarwick大学、皮膚の状態と構造を分析するTHz技術を開発

January, 18, 2021, 香港--香港中文大学(CUHK)とUniversity of Warwick工学部の研究チームは、テラヘルツ(THz)放射を使い皮膚の構造を分析する新しい方法を開発した。新技術は、現在の方法よりも詳細な皮膚エリアの構造と、それがどの程度水和しているかの画像を構築し、皮膚炎、乾癬、皮膚ガンなど皮膚の症状の診断と処置に役立てることが可能である。研究成果は、Advanced Photonics Researchに発表された、

THz波は、プラスチック、セラミックス、繊維など多くの一般的な物質を通して見ることができ、非侵襲的検査に潜在的に有用である。THzの低エネルギーフォトンは非電離であるので、セキュリティや医療スクリーニングを含む生物学的設定で安全である。

皮膚の外層(角質層、上皮)を透過したTHz波だけが反射されて戻る前に検出される。奥深くまで進んだ波は著しく減衰するからである。皮膚の特性により、そのTHz波の反射の仕方がわずかに異なる。研究者は、それが皮膚に入る前と後の光の特性を比較することができる。

標準的なTHz反射分光には制約があり、これを克服するためにこの研究の背後の研究者は、代わりにエリプソメトリ(偏光解析法)を利用した。これはTHz波を皮膚の同じ領域に多角的に焦点を合わせる必要がある。

通常のTHz反射イメージングでは、厚さと屈折率がひとつのパラメタに統合される。多角的に計測することで、その二つは分離できる。チームは、エリプソメトリを使うことで皮膚の屈折率を正確に計算できることの実証に成功した。これにより、光線が透過する速さが確定し、2つの方向で直角に計測される。これらの屈折率の違いは複屈折と言われる。また、人の皮膚のTHz複屈折が生体で計測されたのはこれが初めてである。これらの特性は、皮膚にどの程度水分があるかについての貴重な情報提供し、皮膚の厚さ計算を可能にする。

CUHK電気工学部ポスドクフェロー、論文の筆頭著者、Dr. Xuequan Chenは、「THz波は、皮膚の水和レベルに敏感であることが知られている。しかし、われわれは、角質層の細胞構造はTHz反射にも反応することを指摘した。われわれの技術により、この構造特性が感度良くプローブできる。これにより筆についての包括的な情報が得られ、それは皮膚の診断に極めて有用である」とコメントしている。

CUHK電子工学部、ワルシャワ大学物理学部、Emma Pickwell-MacPherson教授は、「潤いのある肌は、乾燥肌とは屈折率が異なる。皮膚炎、乾癬のような症状の人々のためのスキンケア製品を改善しようとするなら、異なる製品で皮膚がどう改善するかの定量的評価を行い、皮膚のタイプを差別化することができなければならいな。皮膚ガン患者には、THzイメージングを使って、手術前に皮膚をプローブし、腫瘍がどの程度広がっているかをよく認識しておくことが可能。特に、皮膚の表面下の見えない箇所」とコメントしている。

新方法をテストするために研究チームは、周囲環境温度や実験室の乾燥に慣れさせた後、THz放射装置のイメージングウインドウに30分間ボランティアの人たちの腕を置いてもらった。イメージングウインドウの表面に対して皮膚を保持することで、発汗で皮膚から水分が逃げるのを阻止した。閉塞プロセスである。

次に30分、2分ごとに直角に4回計測を行った。時間経過とともに閉塞の効果をモニタできるようにするためである。THz波は、特に水に敏感であるので、皮膚に水分が集まっていると際立つ違いが見える。その方法が、例えば、皮膚を水和に保つ上でいかに効果的であるかを示している。さらなる研究は、そのプロセスの計測器の改善と実用的なデバイスとして機能させることである。

(詳細は、https://www.cpr.cuhk.edu.hk)