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3Dプリントレンズでオプティクスとデータ転送問題に対処

December, 15, 2020, Champaign--イリノイ大学の研究チームは、屈折率が調整できる新しい3Dプリントマイクロレンズを開発した。これは、極めて特殊な集光力を付与する特性である。この進歩により、コンピュータチップや他の光学系のデータルーティング能力を大幅に高めることでイメージング、コンピューティングや通信を改善する。

研究は、イリノイ大学(University of Illinois Urbana-Champaign)の研究者、Paul BraunとLynford Goddardをリーダーとするものであり、サブマイクロメートル精度でレンズを通して光を曲げ、透過方向を調整する能力を初めて実証している。
 研究成果は、Light: Science and Applicationに発表された。

「様々な形状、光学パラメタのオプティクスを製造できることで、光学が直面している共通の問題に対するソリューションが提供できる。例えば、イメージングアプリケーションでは、特殊な物体に集光するとエッジがボヤけることがよくある。あるいは、データ転送アプリケーションでは、コンピュータチップのスペースを犠牲にすることなくスピードが速い方が望ましい。われわれの新しいレンズ製造技術は、こうした問題に一つの集積デバイスで対処する」と材料科学・工学教授、Braunは説明している。

デモンストレーションとしてチームは、3つのレンズを作製した。フラットレンズ、世界初の可視光Luneburgレンズ、固有の集光特性をもつ球レンズの製造は以前は不可能だった。それに大量のデータルーティング機能を可能にする3D導波路。

「標準的なレンズは、1つの屈折率であり、したがってレンズを透過できる光のパスは一つしかない。製造中に内部屈折率とレンズの形状を制御することで、単一レンズ内で光を曲げる2つの独立したパスが得られる」とGoddardは言う。

実験室で研究チームは、ダイレクトレーザライティングというプロセスを使ってレンズを作製。レーザが、液体ポリマを固化し、人の髪の毛よりも100倍小さな幾何光学構造を形成する。ダイレクトレーザライティングは、研究者によると、屈折率が一つだけの他のマイクロレンズ作製に以前に使用されていた。

「われわれは、ナノポラススカフォールディング支持材の内部にプリントすることで屈折率の制約に対処した。スカフォールドは、マイクロオプティクスを所定の場所に固定し、浮遊成分のある3Dシステム製造を可能にする」とBraunは説明している。

研究チームは、この屈折率制御がポリマ硬化プロセスの結果であることを理論化している「細孔にトラップされたポリマ量は、レーザ強度と露光条件で制御される。ポリマ自体の光学特性は変化しないが、材料全体の屈折率は、レーザ露光の関数として制御される」とBraunは説明している。

チームによると、その方法は、複雑な光コンポーネントの製造、イメージングシステムに大きな影響を与え、パーソナルコンピュータの進歩に有用であると考えられる。

「この開発のアプリケーションの素晴らしい例は、パーソナルコンピュータ内のデータ転送への影響である。現在のコンピュータは、データ転送に電気接続を使用する。しかし、光導波路を使うとデータ転送は大幅に高速化できる。光の異なる色を使ってデータを並列伝送できるからである。主要な課題は、従来の導波路が単一面でしか作れないことである。したがって、チップの限られた数の点しか接続できない。3D導波路を作製することで、われわれはデータルーティング、転送速度、エネルギー効率を飛躍的に改善できる」とGoddardは説明している。

(詳細は、https://news.illinois.edu)