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パタン視覚刺激を使って脳の回路を制御

June, 6, 2014, Quebec--マギル大学(McGill University)の研究チームは、感覚刺激の相対的な時間により、脳が神経回路を再形成したり微調整したりすることを初めて明らかにした。
 今日のほとんどの神経科学の教科書では、脳細胞のパタン化された興奮に基づいて神経回路がどのようにその接続を改善するかを説明するモデルが広く支持されているが、これまでにそれがリアルタイムで観察されたことはなかった。これは、マギル大学心理学者、Donald Olding Hebbに因んで「ヘビアン理論」と呼ばれている。同氏は1949年に初めて「ともに興奮する細胞がともに回路を作る。興奮が同調しない細胞はリンクを失う」と提案した。
 言い換えると、近隣の神経細胞と同時に興奮する神経細胞は協調的に、そのパートナーと強く安定した接続を形成する。他方、近隣の細胞と同調しないで興奮する神経細胞は不安定化して接続を断つ。「最初、完全なままの動物の脳細胞を観察することからヘブのモデルをサポートする直接的なリアルタイムの証拠を得ているが、そのモデルを根本的に21世紀にアップデートする、驚くような、新たな細部を提供する」とDr Edward Rthazer氏はコメントしている。同氏は、モントリオール神経学研究所および病院(The Neuro at McGill University and the McGill University Health Centre)のシニア研究員。
 研究では、多光子レーザ走査顕微鏡を用いて手を加えていない動物の脳細胞を観察し、非同期の興奮により脳細胞が他の細胞を興奮させる能力を失うだけでなく、意外にも、より適合的なパートナーを求めて新たな分岐を飛躍的に増やしていることを発見した。「たとえ非同期刺激から再設計しようとしている神経回路が盛んに接続を弱めているとしても、軸索分岐では60%の増加がある。これらは周囲を探索しているが、この探索分岐の寿命は長くない」とDr. Ruthazer氏は説明している。
 同氏の研究室は発育期の脳回路形成のチャートを作成し、健康な脳の配線をコントロールする法則をよりよく理解できるように、また神経系の障害の治療促進、さらには自閉症や分裂病などの神経発達障害の治療に役立てたいと考えている。カナダ人のほぼ100人に1人の割合でこのような障害1つに罹っており、推定でカナダ経済に年間100億ドルのコストがかかっている。
 発達期の脳では、神経細胞間の当初の不明確な接続が徐々に取り除かれ、より強くて特別な接続が残る。このような改善は、環境からのパタン化された刺激に反応して起こる。
 研究チームは、ゼノパスのオタマジャクシの脳の発達を調べ、内部の神経系をはっきりと見ることが可能になった。研究チームは、神経細胞が生体内でリアルタイムにリモデルすることを観察し、細胞間の接続の有効性を測ることができるモデルを開発した。光ファイバを使ってオタマジャクシの目を異なる光パタンで刺激し、同時に神経細胞の分岐形成を撮像し記録した。非同期の刺激は時を異にして各々の目に光フラッシュを与えること、同期刺激は両方の目に同時刺激を与えることを意味した。
 重要なことは、研究グループは神経系におけるこれらの変化のベースにある分子メカニズムの特定も始めていたことだ。研究チームは、同時興奮によって起こる網膜神経細胞の安定化は、神経伝達物質受容体、いわゆるNメチルDアスパラギン酸受容体のシナプス活性化信号情報のダウンストリームを意味することを明らかにしている。対照的に、非同期活動とともに起こる強化された探索成長は、この受容体の活性化を必要としないようである。
(詳細は、www.mcgill.ca)