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レーザを赤外波長にチューニングする画期的な方法

November, 9, 2020, Quebec--INRS研究チームは、レーザスペクトルを赤外波長にチューニングするコスト効果の優れた方法を発見した。

研究チームは、オーストリア、ロシアのチームと協働し、現在特許申請中の革新的方法を開発した。研究成果は、Opticaに掲載されている。この研究分野では、レーザ波長が赤外域にあり、可変できるなら、決定的に有利なレーザアプリケーションが多くある。しかし、これは現在の超高速レーザ技術では、依然として困難である。研究者は、出力波長をシフトするために、様々な非線形プロセスを探求する必要がある。特に、OPA(光パラメトリック増幅器)は、これまで、この赤外ウインドウに達する唯一の確立されたツールであった。OPAシステムは広い可変性があるが、複雑であり、多段で構成されていることがよくあり、非常に高価である。

Luca Razzari教授は、Roberto Morandotti教授と協力して、簡素で遙かに安価なシステム、窒素で満たした中空コア(キャピラリ)ファイバで大きな波長可変性も達成可能であることを実証した。また、このアプローチは、入力レーザよりも短い光パルスを、高い空間品質で即座に生成可能である。研究チームには、この分野でINRS技術の優位性があった。特殊システムがそのようなファイバをストレッチしホールドすることは、スタートアップ、few-cycleによって、市場投入されている。

非対称スペクトル拡大
通常、中空コアファイバは、アルゴンなど単原子気体で満たされている。レーザスペクトルを広げ、次にそれを極短パルス光に圧縮するためである。研究チームは、窒素などの分子ガスを使うことで、スペクトル広がりはなお可能であるが、それは予想外の仕方であることを発見した。

対称的に広がるのではなく、スペクトルは、あまり活発でない赤外波長に見事にシフトした。この周波数シフトは、ガス分子の回転に関連する非線形応答の結果である。こうして、それはファイバ内のガス圧(分子の数)を変えることで容易に制御可能である(Dr. Riccardo Piccoli)。

ビームが赤外に広がると、研究者は、その出力スペクトルをフィルタリングして、関心のある帯域だけを保持する。このアプローチにより、エネルギーは、近赤外スペクトル領域に伝達される(OPAsに匹敵する効率)、パルスは出力より3倍短パルスである。いかなる複雑な装置、追加のポスト圧縮システムも必要でない。

国際的協働
この研究を仕上げるために、INRS研究者はオーストリアとロシアの研究者と協力した。

ウイーンのAndrius Baltuska教授とDr. Paolo A. Carpeggianiの研究チームは、INRSの方法を補完する方策を持っていた。同チームは、窒素充填中空コアファイバを使ったが、スペクトルをフィルタリングするのではなく、広がったパルスの位相を調整できるミラーに合わせてそれを圧縮した。「この場合、赤外における全般的なシフトは、あまり極端ではないが、最終パルスは、著しく短パルスで高強度であった。アト秒および強い場の物理学に最適であった」とDr. Carpeggianiは話している。

モスクワのAleksei Zheltikov教授のチームは、これらの光現象を説明するための理論モデル開発に重点を置いている。これら3アプローチを統合することで研究者は、複雑な基礎動力学を完全に理解し、窒素を使うことで極端な赤方シフトを達成するとともに、赤外域で効率的なパルス圧縮も達成できる。

国際チームは、要求が強まる長波長超高速レーザ光源、強い場のアプリケーションに十分に適合し、新しいイトリビウムレーザ技術をベースにした比較的高価でない産業グレード可変システムで始めることができると考えている。

(詳細は、https://inrs.ca)