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ITMO、新しい赤外可視化装置プロトタイプを提案

October, 23, 2020, St. Petersburg--ITMO大学と他大学の研究者は、赤外ビームを人の眼に見えるようにするフレキシブル、透明膜を作製した。これは、光学研究室や製造工場で必要とされる可視化装置実現に利用できる。研究成果、ACS Nanoに発表された。

赤外放射が人の眼に見えないことはよく知られている。しかし、赤外範囲で動作するレーザビームを見る必要があることはよくある。例えば、レーザインストレーションのチェック、その調整時には必要である。

ITMO大学ハイブリッドなのフォトニクス/オプトエレクトロニクス研究所主席研究助手、Sergey Makarovによると、赤外オプティクス分野では、様々な目的のために使用される赤外放射を可視化する仕事がある。「この種の放射は、医療、製造サイト、LiDAR、基礎研究で広く利用されている。実際、光学研究所の2つに1つが赤外レーザを導入している。ITMOだけで、100以上ある」。

導入が赤外域で放射しているかどうかを見るために、必ずしも暗視デバイスを装着したり、スペクトルカメラを使う必要はない。特殊材料でできたカードがこの目的に使える。

「可視光で動作するレーザを使っているなら、いつもの紙をとって、それをビームに対して横方向に入れるだけで、点が見える。しかしこれは、IRレーザでは役に立たない。ビームがその紙を燃やし始めた時にのみビームを認識する。しかし、この場合は、同様に機能する特殊なカードがある。それをビームの途中に入れると、その表面に点が見える。カードは、希土類金属イオンを加えて作られており、IR放射を吸収して、それを可視スペクトルに変換する」とSergey Makarovは説明している。

そのようなカードは、赤外レーザを使う光学研究所、製造工場には重要なコンポーネントである。しかし、研究者によると、これらには多くの欠点がある。価格が高いこと、比較的短寿命などである。さらに、それらは汎用的ではなく、全てのシステムに適合するわけでもない。

「そのカードは、実際、赤外放射を吸収し、それを可視スペクトルに変換することで機能するので、一定の波長でだけ使える。それらは、最も広く利用されている波長、約1000nm(医療)と1500nm(通信)である。しかし、非標準波長でレーザを使い、調整する必要があることがよくある。カードが一つの範囲で機能するときにそれを経験することがよくあった。別の波長では機能しなかったので、新しいカードを発注する必要があり、1つ当たり100ドル程度の費用となった。また、最初から新しいカードを購入しなければならなかった」(Daria Markina)。

理論から実践
赤外可視化ハードの高コストと短寿命に関係する困難を常に経験しているので、ITMO大学や他大学の研究者は、基礎的な研究を新しい世代のIR可視化装置の実現に適用すること決定。既存技術の問題点の多くをなくしたIR可視化装置である。

「光学物理学者として、われわれは、この全てがどのうよに機能するかを理解し、さらにナノ材料とナノテクノロジーの分野で素晴らしい基礎研究を行った。われわれはそのような現象を以前から研究してきた、ナノ構造で光高調波生成によりIR放射を可視光に変換する研究である」とITMO大学物理学光学シニア研究助手、Mikhail Petrovは説明している。。

プロトタイプを造るために研究チームは、ガリウムリン(GaP)ナノワイヤを選択した。セントペテルスブルク大学の研究者は、長年、この材料からナノ構造を成長させることに取り組んでいる。それは、いくつか非常に興味深い光学特性を持っている。

「この材料は非中心対称性結晶格子であるので、入射光の波長を半分にする。つまり、波長1000nmの赤外光は、500nmの可視光、青緑色に変換される。この原理は、幅広い波長範囲の放射に働き、多くの既存IR可視化カードの主要問題、万能でなく、波長の制約がある、という問題を解決する」とVladimir Fedorovは説明している。

「われわれの仲間が、ガリウムリンナノワイヤを基板に垂直成長させた。次に、薄いポリマ層でナノワイヤを覆い、それを基板から剥がして、これらのナノ構造でいっぱいになった膜を入手した。ある点で、これはロシアにとっては全く比類のない技術である。これが、柔軟で薄い半透明膜を入手する方法である。膜は、大きな歪なしで赤外ビームを透過し、その波長を低減して人の眼に見えるようにする。この全てが、われわれの研究室の優れた技術装置によって可能になった」とセントペテルスブルク大学再生可能エネルギー源研究所、Ivan Mukhinは話している。

Saint Petersburg Academic University のシニア研究者、Vladimir Neplokhは、フレキシブルオプトエレクトロニックデバイスは、極めて今日的である、と言う。

「それらは赤外構造だけでなく、ディスプレイやタッチスクリーンでも利用される。われわれの見方では、ナノワイヤベースの構造は、近い将来、新しい世代のデバイスを造り、既存ソリューションを置き換える」

そのフィルムの透明性が重要な役割を担う。既存サンプルは、放射を透過できない。1枚の紙のようにビームを完全にブロックする。しかし、セントペテルスブルク研究者が入手したサンプルは、光を透過させるので、非常に使いやすい。

「光学系の調整には多くの時間がかかる。ほぼ日常的にしなければならない。ビームの方向を変えるために、一定角度で複数のミラーで反射させなければならないことがよくある。これは、かなりの微細調整である。赤外放射の場合、実質、盲目的に取り組んでいる。そのインストールが動き始めて、変換されたビームが見えるようなると、調整は非常に便利になる。不透明なカードを入れるだけで、よくあるように、必ずしも遮断されるわけではないので、一つのインストレーションモジュールを調整して、さらにもう1つを調整しなければならない。理想的には同時に、ビームがどのように透過するかを制御することである。したがって、透明なカードを利用することでわれわれは、一石二鳥になる。われわれは遮ることなく、光を見ることができる。われわれの知る限りでは、市場には同じ機能の類似物は存在しない。シングル粒子にかかわる、この基本的な研究を実世界のスケーラブルな技術に移行することは重要な一歩である」とETH-Zurich研究者、Mariia Timofeevaはコメントしている。

(詳細は、https://news.itmo.ru)