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Science/Research 詳細

データセンタ用サーバの計算速度を一桁高速化

October, 21, 2020, 東京--NEDOは技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)と共同で、サーバボードにデータ転送先を切り替えるスイッチング機能を実装し、全サーバボード間を光配線で直結したラック型サーバシステムを世界で初めて完成した。
 電気スイッチでの中継が不要なことから、従来のデータ伝送方式と比べ計算速度を一桁高速にできる。これによりデータセンタの消費電力量を低減できるため、多くの電力量と計算時間が必要となるビッグデータやAIの利用を促進する効果も期待できる。

ビッグデータやAIの進展を背景に、膨大な量の情報を扱うデータセンタではLSI(大規模集積回路)やサーバ間の情報伝送量が増大し、消費電力量が急激に増加する課題に直面している。また、LSIやサーバ間のデータのやり取りに用いられる電気配線は、データ量の爆発的な増加やLSIの性能向上によってデータの入出力処理に限界があるため、情報処理能力を向上するボトルネックとなりつつある。これに対し、光配線はデータセンタなどにおけるサーバシステムや光通信システム向けIT機器の大幅な小型化・高速化・省電力化を可能にすることから、世界各国で開発が加速している。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)は、2012年度から10年間の「超低消費電力型光エレクトロニクス実装システム技術開発」として光配線技術や光トランシーバ技術の開発を進めている。

すでに成果も挙げており、2014年度までにシリコンフォトニクス技術を用いた世界で最も高速・小型・低消費電力・低コストを実現した5mm角の超小型光トランシーバ「光I/Oコア」を開発し、LSI近傍に光トランシーバを実装することを可能にした。これによりLSIの電気信号をすぐに光信号へ変換できるようになり、消費電力を抑えてデータを伝送することが可能になった。また2016年度までには光I/Oコア8個をLSI近傍に実装したアクセラレータボードを開発し、大容量LSIのデータの入出力に必要とされる、送受信で1.6Tbpsの伝送速度を達成した。

NEDOとPETRAは、サーバボードに搭載したアクセラレータボードのFPGAにスイッチング機能(分散スイッチ)を実装し、全サーバボード間を光配線で直結したラック型サーバシステムを世界で初めて開発した。電気スイッチで中継することなくサーバボード間のデータを通信できることから、電気スイッチを介してデータ伝送を行う従来システムと比べ、計算速度を一桁高速にすることに成功した。

この結果、例えば心臓や肺の診断などに用いられる3次元CT(コンピュータ断層撮影法)の画像処理では、電気スイッチを介した電気接続によるコンピュータシステムで5分を要していた処理時間を30秒に短縮できる。

NEDOとPETRAは、このプロジェクトで開発中の光電子集積インターポーザ技術の成果を今回開発したラック型サーバシステムにも適用し、並列度を上げるとともに、さらなる省電力化を可能にする技術開発を進める。
(詳細は、https://www.nedo.go.jp)