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長波長赤外での強光子場の実現とアト秒X線源の開発に大きく前進

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October, 8, 2020, 京都--京都大学の全炳俊助教、大垣英明教授、量子科学技術研究開発機構の羽島良一上席研究員の共同研究グループは、京都大学エネルギー理工学研究所の自由電子レーザ装置(KU-FEL)において、共振器型自由電子レーザ(Free-Electron Laser; FEL)の世界最高変換効率を達成した。

 極短パルス高強度レーザと物質の相互作用においては、レーザ波長が長くなると、トンネル電離した電子がレーザ電場から受け取るエネルギーが大きくなり、高次高調波発生によるアト秒X線パルス(アトは100京分の1)の生成に有利となる。このため、レーザの発振波長を、近赤外(1-4µm )から中赤外(4-8µm)、長波長赤外(8–15µm)へと拡大する研究が国内外で近年さかんに行われている。高エネルギーに加速した電子ビームを使ってレーザ発振を行う共振器型自由電子レーザは、赤外を含む広い波長領域で動作可能であるが、アト秒X線の発生をはじめとした強光子場科学への応用には、電子ビームからレーザへのエネルギーの変換効率を向上してレーザパルスエネルギーを高めると同時に、極短パルスの生成方法を確立する必要があった。

 研究グループはKU-FELにおいて、電子放出手法の変更による供給電子ビーム量の大幅な増大と精緻な加速器制御により、超放射発振と呼ばれる特殊な条件下での発振を可能とし、波長11µmにて、世界最高となる9.4%の変換効率を達成した。超放射発振では変換効率の増大とパルスの短縮が同時に起こることが知られており、この実験でも極短パルスが生成されていると考えられる。この研究は、これまで未開拓であった長波長赤外領域における強光子場科学の研究やアト秒X線源の開発に寄与する。

 研究成果は国際学術誌Applied Physics Expressのオンライン版に10月1日に掲載されると共に、特筆すべき成果として同学術誌の“Spotlights”論文に選ばれた。
(詳細は、https://www.qst.go.jp)