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量子コンピューティングを変革、新しい放射線ディテクタ

October, 7, 2020, Espoo--アールト大学(Aalto University)とVTTの研究チームは、フォトンのエネルギーを検出し、同時に、量子コンピュータに必要なキュービットのエネルギー状態を以前よりも正確かつ速く確定できる新しいナノサイズの放射線検出器を開発した。研究成果は、Natureに発表された。

ナノスケール放射線ディテクタはボロメータと呼ばれており、その動作は計測される放射線の加温効果に基づいている。そのスピードと正確さにより、放射線ディテクタは研究室から、量子コンピュータなどの実用的アプリケーションへの道を見つけることができる。

アールト大学研究グループのMikko Möttönen教授は、10年前から高感度ボロメータの研究を続けている。

「われわれは、放射線ディテクタの特性改善に年々成功してきている。現在、われわれのボロメータのスピードと正確さはキュービットに含まれる量子情報を読み取れそうである」と同教授はコメントしている。

研究チームは、以前にローノイズ金パラジウムボロメータの構築に成功している、つまり信号のバウンディングはほとんどなかった。しかし、それは量子コンピュータのキュービットを計測するには、まだ遅すぎた。新しいブレイクスルーは、金パラジウムをグラフェンに置き換えることで達成された。この目的のために、研究チームは、Pertti Hakonen教授をリーダーとするグループと協力した。同グループは、グラフェンベースデバイス作製経験がある。

「グラフェンでディテクタを作ると、100倍高速になった。ただし、ノイズレベルは同じままだった。この暫定的な結果の後に、われわれは放射線ディテクタ改善のために、まだ多くの最適化を行うことができる」とHakonen教授は話している。

ノイズ低下
キュービットのエネルギー計測は、量子コンピュータ動作の不可欠の部分である。今日、ほとんどの量子コンピュータは、それから出る電圧を計測することでキュービットのエネルギー状態を判定している。しかし、電圧計測には課題がある。大きな増幅器回路が必要であり、そのソリューションの大規模利用を制約している。加えて、増幅器は、多くのエネルギーを消費し、電圧計測は量子ノイズを含んでおり、これが計測誤差の原因となる。

グラフェンの蓄熱容量は低く、したがって、グラフェン製のサーマルディテクタ、例えば熱計測は、非常に小さな熱の変化を素早く、マイクロ秒以下で検出する。さらに、ポスドク研究者、Antti Laitinenが作製したグラフェンピースは、1個のバクテリア内に収まるほどに小さい。

「放射ディテクタの小サイズは、グラフェンの2D構造、平面構造によるものである。わずか1原子厚であり、近年開発されたナノ製法である」と同氏は説明している(現在、ハーバードで研究)。

計測は、博士課程学生Roope Kokkoniemiが行った。同氏は、論文を仕上げ、現在は量子コンピュータを構築する企業で仕事をしている。

「放射線ディテクタの性能は、優れた計測技術だけで著しく改善される」とKokkoniemiは話している。

研究チームは、放射線ディテクタの精度のさらなる改善、それを量子アプリケーションで利用することに焦点を当てる。

(詳細は、https://www.aalto.fi)