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ソフト材料3Dプリンティングに新方法

October, 6, 2020, Gaithersbur--NISTの研究者は、ゲルや他のソフト材料を3Dプリンティングする新しい方法を開発した。論文によると、ナノメートルスケールで複雑な構造を作ることができる。多くのゲルは、生きた細胞と相性がいいので、その新しい方法は、薬剤輸送システム、人体に挿入できるフレキシブル電極など、ソフトな微小医療デバイスの製造をジャンプスタートできる。

標準3Dプリンターは、一般にプラスチックあるいはゴムなどの材料シートを作り、ラザニアのように、レイヤーごとに積み上げることで硬い構造を作製し、最終的に物体全体を実現する。

3Dプリンターを使ってゲルでできた物体を製造することは、「いささか繊細な料理プロセス」であると、NISTの研究者、Andrei Kolmakovは言う。標準的な方法では、3Dプリンターチャンバは、水に溶けた長鎖ポリマ(結合した長い分子群)のスープでいっぱいになっている。次に「スパイス」を加える、これは光に感度がある特殊な分子。3Dプリンターからの光がその特殊分子を活性化すると、ポリマチェーンをまとめ、フワフワした網のような構造が形成される。このスカフォールディングがゲルである、ただし、まだ液体の水に囲まれている。

一般に、最近の3Dゲルプリンターは、紫外または可視光レーザ光を使い、ゲルスカフォールディングの形成を始める。しかし、Kolmakovのチームは、ゲルを製造するために異なる3Dプリンティング技術に注目した、電子ビームあるいはX線を使う方法である。この種の放射は、UVや可視光よりもエネルギーが高い、つまり短波長であるので、これらのビームは、強く集束され、微細構造細部をもつゲルを製造する。そのような細部は、正しく、生体医療や多くの他の医療、生物学アプリケーションで必要とされているものである。電子とX線は、二つ目の利点を持つ。ゲル形成を開始するために特殊な分子を必要としないことである。

しかし、現在、この強く集束される光源、短波長放射、SEMやX線顕微鏡は、真空中でのみ動作可能である。真空中では、各チャンバの液体は、ゲルを形成するのではなく、蒸発するので、それが問題である。

NISTと、イタリアElettra Sincotrone Tristeの研究チームは、真空と液体チャンバの間に超薄バリア、薄いSiNシートを置くことで、その問題を解決し、液体中の3Dプリンティングを実証した。その薄いシートは、液体が蒸発しないようするが、X線や電子は液体に浸透することが可能である。その方法によりチームは、3Dプリンティングアプローチを利用して、100nmの構造を持つゲルを作製することができた。その方法を改善することで、研究チームは、50nm、小さなウイルスのサイズのゲルに構造をインプリントすることを考えている。

このアプローチで作製される未来の構造の中に含まれるのは、脳の活動を活性化するためのフレキシブルで注入可能な電極、ウイルス検出用のバイオセンサ、ソフトマイクロロボット、生きた細胞を模倣し、それと相互作用し、成長の媒体を供給する構造などである。

研究成果は、ACS Nanoに発表されている。

(詳細は、https://www.nist.gov)