コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

信号ノイズを大幅に低減する新しい中空コアファイバ

October, 6, 2020, Rochester--ロチェスター大学の報告によると、現在広く利用されているシングルモードファイバ(SMF)と比べて伝送信号を妨害する「ノイズ」を大幅に低減する画期的な光ファイバが開発された。

反共振中空コアファイバは、セントラルフロリダ大学の研究チームが作製したもので、信号が室温でガラス内を伝搬する際、ガラス内の量子物質、音響フォトンの振動が原因となる妨害は過去最小記録だった。

ラボの研究成果は、そのファイバが、量子情報処理や光通信など、ローノイズアプリケーションに有望なプラットフォームであることを証明している、と論文の筆頭著晋、Arjun Iyerは話している。同氏は、現在ロチェスター大学光学准教授。

ファイバの特性を記録するために、William Renningerラボの研究者は、高感度計測技術を開発した。その成果は、APL Photonicsに発表された。

「それは非常に価値のあるファイバである。研究者や企業などが強い関心を示しているにもかかわらず、その構造でサポートされるフォノンの挙動を実際に研究した者はだれもいなかった。また、それがどの程度、実際にノイズを低減し、弱くできるかについても研究されていない」とRenningerは語っている。同氏は、非線形光学の実験、理論の専門家である。

光ファイバ「ノイズ」に対する独自の答
「ノイズ」は、光ファイバで光が伝送される信号を覆い、混乱させる障害のことである。そのような障害の一つが、フォノンによるものである。これは、光ファイバのガラスの場合。原子レベル、サブ原子レベルで起こる量子化された音響波である。

フォノンは、光ビームを「散乱」させ、様々な周波数の破片ビームを生み出す。それは、主ビームを妨害し、エネルギーを低減させる。散乱の形態の中には、特殊なアプリケーションに役立つものもあるが、それは、量子アプリケーション、基本的な光通信とさえも妨害する。

ノイズは、ファイバを極低温まで冷却することで低減できるが、それは「非常に高価で複雑」である。別のアプローチは、ノイズ訂正のために複雑なエラー訂正アルゴリズムの利用である。

しかし、反共振中空コアファイバは、室温で機能する直接的なソリューションである。論文の共著者、セントラルフロリダ大学のRodrigo Amezcua Correaが作製したファイバの特徴は、ファイバ内の中空コアの周囲に7個の空孔キャピラリを独自に配置している。

結果は、ファイバのガラス外層とコアを伝搬する光との小さなオーバーラップであり、これがガラスから生ずる音響フォノンの妨害を除去する。

Renningerラボのテストは、その配置が他の中空コア設計と比較して、ノイズ低減効果が10倍優れていることを示している。「残っているわずかなノイズは、ファイバ内の空気の音響波によるものである。したがって、空気を取り去ると、さらに100倍の効果が得られる。信じられないほどの低ノイズである」とRenningerは話している。

(詳細は、https://www.rochester.edu)