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スマホカメラに広視野を実現USP研究者が開発したフラットレンズ

September, 1, 2020, Washington--USP São Carlos School of Engineering (EESC)の研究者は、髪の毛よりも1000倍薄いシリコン膜を開発した。これは、スマートフォンカメラなどで、写真レンズとして機能する。前例のない技術によりユーザは、180°まで画像を見ることができる。これは魚眼レンズで得られるのと同じ角度である。科学的世界では、この機能は、EESCが作製したような完全フラットレンズでは、これまでは不可能と考えられていた。研究成果は、ACS Photonicsに発表された。

その新しいレンズは重量約2マイクログラム、厚さ230 nm、大きさ3.14平方ミリメートル。研究者によると、その材料は光学機器の開発で主要な課題の一つに立ち向かう際に役立つ。著しく強力なレンズを製造するが、非常に小さなサイズ。「われわれのレンズの最大の利点は、それが極薄であること。だから、従来のレンズに比べて安価に製造できる。従来レンズは大きく、球である。われわれのものは平坦面であるので、集積回路への組込が容易であり、デバイスの機械的部分を簡素化する」とEESC電気光学博士課程学生、論文の著者、Augusto Martinsは説明している。

サイズが小さいことに加えて、そのシリコン膜のもう1つの利点は、高解像度画像を得るために、一般的カメラにあるように補完的レンズを組み込むことなく、携帯電話の中で単独で機能することである。これは、光学系のサイズをさらに小さくし、結果的にモバイル機器のサイズも小さくなる。「これは、全視野をカバーする画像を生成できる単層で形成される世界初のレンズである」とEESC、電気・コンピュータ工学(SEL)教授、研究監督の一人、Emiliano R. Martinsは話している。

研究の中で、Augusto Martinsは、そのレンズをテストするために3Dプリンタの助けを借りてプロトタイプカメラを作製した。結果は、励みになるものであった。高解像度画像が緑で得られた。現在、これがその膜が動作できる唯一のものである。研究者によると、今後数ヶ月で、そのレンズは、全色で見られるように改善される。

新しいレンズの構成に到達するために研究者は従来のレンズを出発点とし、屈折率というパラメタを採用し、取り組んだ。これは、光が表面に当たったときに速度がどの程度減少するかを計測する。その率が高ければ高いほど、材料による光伝搬速度は低くなる。コンピュータシミュレーションで、従来の球レンズの屈折率が増加し、同時にレンズが平坦に造られていると、視野はますます広がり、画像品質が向上する。ある点で、それが100%フラットになるなら、その屈折率は無限になるが、実際には光がそれによって広がらなくなり、あり得ないことが起こる。

その技術の源泉
USPが開発したレンズは金属タイプであり、メタサーフェスというコンセプトの一部、光特性をコントロールできるようにする一連のナノ構造である。数年前に発見されたこの技術は、レンズの製造の他に、情報セキュリティ、コンピュータコンポーネントやエンタテーメントの製造などのセグメントに適用可能である。昨年、Augustoは、3Dホログラムを、より高品質に作れるメタサーフェス開発に参加した。

通常のレンズは、鮮明な画像生成するにはどんどん厚くする必要があるが、それとは違い、メタレンズは、その平坦面に挿入された微細なのポストを利用する。これは、周辺光を「保持」し集光させ、画像を投影させる。あたかも、自動車(光)が飛び出さないように作られたハイウエイのようである。2016年、米国、ハーバード大学の研究者が、写真を撮ることができる世界初のメタレンズを開発したが、それには制約があった。視界はわずか0.5°だった、これは眼前にあるものしか見ることができない角度である。

現在、メタレンズ動作を他の色に広げるだけでなく、EESC研究者は、研究の次のステップで、膜の効率向上、その解像度のさらなる改善、それをもっと複雑な光学系へ適用することを考えている。当面、その技術が市場にでる時期の予測はない。

(詳細は、https://jornal.usp.br)