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フランウンホーファーIGB、UV光を使って高効率水処理

May, 29, 2014, Stuttgart--廃水にはバイオ廃水処理プラントで分解が困難な有害物質が多く含まれている。フランウンホーファーの研究チームは、化学触媒を使う必要なくUV光で高信頼に処理できる光化学反応システムを開発した。
 廃水には、環境に流れ込むべきでない多くの物質が含まれているが、廃水処理プラントはその汚染物質の一部しか取り除かない。特に、バイオ処理段で通常用いられているバクテリアは、高安定炭化水素化合物を含む難分解性物質には全く効果がない。その結果、洗浄剤や殺虫剤、薬剤が環境水に入っていくことになる。
 フランウンホーファー界面工学、バイオテクノロジー研究所IGBの研究チームは、国際的な産業パートナーと協力して新しい化学反応システムを開発した。このシステムは、これらの種類の耐久性があり、有害な分子を完全に、しかも効率的に分解することができ、過酸化水素などの薬品を加える必要がない。研究チームは基本的に、光分解の助けを借りた水の「自己回復」力を利用する。光分解の原理はフォトンを使った水分子分解をベースにしている。光の波長が短ければ短いほど、フォトンのエネルギーは高い。したがって研究チームは、このシステムでは172nm域のUV光を出す光源を使用する。つまり、これは極めて高エネルギーのフォトン。このフォトンが水に入ると、水の分子を分解し、極めて反応性に富むヒドロキシルラジカルを形成する。「このヒドロキシル化合物は、例えば原子状酸素と比べても遙かに反応性が強い。したがって、有害残存物に含まれる高安定の炭化水素化合物でも分解することができる」とIGBフィジカルプロセス技術部長、Siegfried Egner氏は説明している。
 ただ、ここには問題点が1つある。このプロセスは、反応器の方形、フラットガラス素子、UVエミッタの近傍でしか起こらない。その素子にパワーを加えると、ハイドロキシルラジカルが薄い反応境界層を形成するが、これはガラス外面周囲のわずか50µm程度離れた範囲である。確実に、有害粒子を未処理のまま逃さないようにするには、水を制御して検証可能な形でこの境界層を通さなければならない。実にやっかいな作業になる。一方で反応器の全ての内容物が確実に処理されなければならない。他方研究者は、形成された全てのハイドロキシルラジカルが化学反応に使われることを可能な限り確認したい。極めて反応性の高いハイドロキシルラジカルは短命であるためである。この時間間隔に反応すべき新しい分子が見つからなければ、ハイドロキシルラジカルのエネルギーは未使用になる。シュトットガルトの研究チームは、反応器内容のすべてが高信頼、高効率に処理されるように、水の動きの制御に成功している。
 初めてのプロトタイプは、1時間あたりのスループットが2.5立方メートル。品質に問題なく水が放出されることを確認するために、このユニットは追加の安全機構を備えている。センサシステムは放出ポートの位置にあり、水の有害物質をモニタしている。水は、不純物が最大許容値以下になったときに放出される。ユニットは完全自動、プログラマブルとなっている。
(詳細は、www.igb.fraunhofer.de)