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レーザと金粒子を使って酸化チタンを光触媒向けナノコンポジットに

June, 18, 2020, St. Petersburg--様々な金属の酸化物は、多様なシステムで光触媒として役立つことがある。例えば大気浄化、水分解反応、ガラスや鏡の自己洗浄反応。そのような物質の物理的化学的特性は、ナノ粒子を加えることで改善される。
 ナノ粒子は、普通の酸化物を新しい特性を持つナノマテリアルに変える。しかし、これを成功させるには、ナノコンポジットが形成される際に進行するプロセスを理解し、それを制御できることが必要である。ITMO大学研究者は、フランス、米国のの研究者とともに、フェムト秒レーザを使って、金ナノ粒子で満たされた二酸化チタン膜の構造とナノコンポジット特性を調整する方法を実証した。論文は、ACS The Journal of Physical Chemistry Cに発表された。

以前に研究者は、光露光で化学プロセスを促進することができる多くの特殊材料を造った。この発見は、産業にとって大きな意味をもっている。そのような材料を、空気浄化装置から燃料電池まで、幅広いデバイスで利用できる。

こうした材料は、次のように機能する。光に晒されると、電子空隙(電子が欠如した空間)が、それらの中に形成される。これは化学反応を始動する。さらに、ナノスケールシステムにこの材料を使うと、研究者は、反応に参加する領域を増やすことができる、したがって量子効果により、バルク材料と比較すると、触媒作用を引き起こす。そのような有望な材料の一つが二酸化チタン、これは金ナノ粒子を注入すると光触媒特性が改善できる。

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実際、そのような複合材料の製造には課題が残っている。二酸化チタン薄膜と金ナノ粒子は別々に作ることができるが、これら2つのコンポーネントの結合法はまだ確立されていない。酸化物膜内にナノ粒子を入れることには難しく、またそのサイズや分布を制御することは、なお一層難しい。ITMO大学を含む国際研究グループは、この目的達成にレーザ照射を利用することを提案した。

「これらの材料をレーザ放射に晒すと、金粒子とその周りの二酸化チタンマトリクスの両方が特性を変える」とITMOのMaksim Sergeevは説明している。

ITMO大学とHubert Curien Laboratoryの研究者は、穴あき二酸化チタンに金イオンが浸透して、数ナノメートルのスケールで素早く粒子を形成する実験を行った。次に、その材料にレーザを照射した。適切に選択したフェムト秒レーザ照射で、材料に損傷を与えることなくナノ粒子の成長を効果的に制御できることが分かった。

「半導体膜で金ナノ粒子のサイズを制御することは簡単ではない。フランスの研究者とともに、われわれは、金ナノ粒子のサイズと分布を変えるレーザ照射の領域を見つけることができた。また、同時の膜表面の形態とその光学特性も再構築する。見たところ、この結果、キャビティが、膜に成長するナノ粒子の周りに形成されるかもしれない。レーザが非常にゆっくりとしたスピードで移動すれば、これらの穴は、一定の領域にだけ現れる」とレーザフォトニクス・オプトとエレクトロニクス学部Ph.D学生、Yaroslava Andreevaは説明している。

「アリゾナ大学の研究者とともにわれわは、この効果を説明するモデルを開発した。それは、レーザ照射に晒されるときに、われわれが材料の温度領域を決めるのに役立つ。モデルは、金属粒子上の共鳴吸収、局所電場増強、非結合電子の光誘起生成、光電子放出を考えている。その材料が、より小さく、またより大きな粒子の両方を含んでいるときに、さらに熱くなることがわかった。しかし、その温度は、まだ、正確に選んだレーザパラメタでその材料を溶かしたり、破壊したりするほど高くなかった」とTatiana Itinaは説明している。同氏は、Hubert Curien Laboratory of the French National Center for Scientific Research.のリサーチディレクタ。

実験とシミュレーションの両方の結果、研究チームは、ナノコンポジット膜形成の背後にあるメカニズムの理解が進み、その特性を一層制御できるようになっている。この目的のためにレーザを使うことで、そのような「金メッキ」二酸化チタン膜の製造が簡単になる。しかし、現在、その技術は準備ができておらず、さらなる研究が進められている。
(詳細は、https://news.itmo.ru)