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リプログラマブル光回路の革新的製造アプローチ

April, 30, 2020, Eindhoven--現代社会は、その中心で電子集積回路(IC)による技術に依存しているが、量子コンピューティングや環境センシングなど将来のアプリケーションでは、これらはあまり適切でないことが証明される可能性がある。フォトニック集積回路(PICs)は、電子ICsの光ベースの同等技術であり、省エネ、高速動作、強化された性能を可能にする新興技術分野である。
 とは言え、現在のPIC製造法は、製造されたデバイス間に大きなバラツキがあり、歩留まりが限られ、概念的なアイデアから実際のデバイスまでの遅れは長く、また設定可能性が欠如している。アイントホーヘン工科大学(TU/e)の研究者は、これらの重要な問題に対処するPICsの製造に新たなプロセスを考案した。これは、1980年代にプログラマブルロジックデバイスの登場が、IC製造を変革したのと同じように、新しい再構成可能PICsを実現するものである。

フォトニック集積回路(PICs)は、可視光と赤外光で信号を伝達する。調整可能な屈折率を持つ光学材料が、再構成可能なPICsには重要である。それらが、その材料を透過する光kより正確な操作を可能にし、優れたPIC性能につながるからである。

現在のプログラマブルPICコンセプトは、不安定さあるいはまた高い光信号損失などの問題がある。その両方とも、材料のプログラムされた状態を維持する能力にマイナスの影響を与える。水素化非晶質シリコン(a-Si:H)、薄膜シリコン太陽電池で用いられる材料と、関連のステーブラー‐ロンスキー効果(SWE: Staebler-Wronski effect)は、a-Si:Hの光学特性が、光露光、加熱でどのように変えられるかを説明している。TU/eの研究者は、新しいPIC製造プロセスを設計した。これは、現在の技術の不足に対処し、汎用的プログラマブルPICsの登場につながる。

PIC歩留まり改善
電気工学准教授、このプロジェクトの研究主導、Oded Razによると、このアプローチは、PICs領域では極めて重要である。「これは再構成可能なPICの世界初の実証である。そこでは、集積光回路を造るために選定された材料のプログラムが行われている」。Mahir Asif Mohammedも、PICs製造の現行アプローチの歩留まりは、一般に非常に低いと指摘している。「われわれの方法は、この歩留まりを大幅に改善できる」。

この革新的な新しいアプローチは、再構成可能PICsについてさらなる研究の波を告げるものであり、その利点はさらに大きい。「最も重要な点は、現在の方法と比較して、プロトタイプするための時間が、著しく短く、非常に正確である。この方法に継続して取り組むと、プロトタイプの時間は継続的に減少すると予測している」とMohammedは話している。
 
研究チームの指摘によると、ユーザが望むとおりにPICデバイスをプログラムできるようにヒーターをプレライト露光デバイスに設置することができる。同じヒーターがデバイスをリセットし、簡単にリプログラムできる状態に戻すことが可能である。「われわれのアプローチは、材料の再利用、持続可能な利用を促進する」とMohammedは話している。

現在、Razが指摘したように、「このアプローチによりユーザはPIC機能を簡単にプログラムし、同時に製造工程における小さなエラーを補正できる。機能を調整するだけである。それには理由がある」。

実験
光露光の効果とa-Si:Hヒーティングを評価しその光学特性を調整するために、研究チームは、まず概念実証実験を考案した。そこでは、シリコン基板上のa-Si:Hの薄い層の屈折率変化を調べた。その材料をヒートサイクル(暗黒窒素雰囲気で4時間)と光浸透(近赤外範囲の可変レーザによる)処理を経た。実験は、約0.001の可逆屈折率変化を示した。これは再構成可能PICs製造の重要要件である。

次に、マイクロリング共振器(MRR)ベースの再構成可能光スイッチ、光浸透サイクルと加熱処理の影響下にあるスイッチは、繰り返し可能な可逆性も示した。また最後に屈折率変化の可逆性の原因をよく理解するために、研究チームは、1次元膜の構造における変動を調べた、そこではMRRデバイスのスイッチング状態に主に寄与するのは、準安定体積膨張であることが示された。
(詳細は、https://www.tue.nl/en/)