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HZDR、安価なブロードスペクトルフォトディテクタ作製

April, 27, 2020, Dresden--デジタルカメラや多くの他の電子機器は感光センサを必要としている。この種のオプトエレクトロニックコンポーネントの需要増に対処するために、業界は新しい半導体材料の探求を行っている。広範な波長をカバーするだけでなく、安価でなければならない。ドレスデンで開発されたハイブリッド材料は、こうした要件の両方を満たすものである。
 Helmholtz-Zentrum Dresden-Rossendorf (HZDR)物理学Ph.D学生、Himani Aroraは、この有機金属構造体(MOFs)が広帯域フォトディテクタとして使えることを実証した。コストがかかる原材料を含んでいないので、バルクで安価に製造できる。

過去20年、MOFsは待ち望まれた材料系だった。これまでのところ、最大90%が空所で構成される、これら多孔性物質は、気体の蓄積、触媒、体内で薬剤をゆっくりと放出するために主に使用されてきた。「TU Dresdenで開発されたMOF化合物は、鉄イオンを統合した有機材料からなる」とHZDR研究所(Institute of Ion Beam Physics and Materials Research) “Transport in Nanostructures”、Dr. Artur Erbeは説明している。「それの特殊な点は、フレームワークが半導体特性を持つ多層を形成することである。そのためオプトエレクトロニックアプリケーションには潜在的に興味深い」。

研究グループは、その新しい半導体2D MOFをフォトディテクタとして利用することを考えていた。それをさらに追求するために、Himani Aroraは、その半導体の電子特性を調べた。特に、その感光性がどの程度まで温度と波長に依存するかを研究し、有望な結論を得た。400~1575 nmでその半導体は、広範囲の光波長を検出できた。したがって放射スペクトルは、紫外から近赤外までの範囲となる。「完全にMOF層をベースにしたフォトディテクタでそのような広帯域光検出を証明したのはこれが初めてである。これらは、材料をオプトエレクトロニックコンポーネントでアクティブ素子として利用する理想的な特性である」。

小さなバンドギャップで効率
 半導体材料がカバーし、電気信号に変換できる波長スペクトルは、本質的に、いわゆるバンドギャップに依存する。一般的な半導体では、価電子帯は完全にいっぱいであり、電子は動き回ることができない。反対に、伝導帯はほとんど空虚であるので電子は自由に動き回り電流に影響を及ぼすことができる。バンドギャツプが小さければ小さいほど、電子を励起するために必要なエネルギーはますます小さくなる。「われわれが研究した材料のバンドギャップは非常に小さいので、電気を誘発するための光エネルギーは、ほんのわずかしか必要でない。これが、検出できるスペクトルが広いことの理由である」とHimani Aroraは説明している。

そのディテクタを冷却して温度を下げることで、性能はさらに改善される。電子の熱励起が抑圧されるからである。他の改善に含まれるのは、成分構成、より信頼の高いコンタクトの作製、さらなる材料開発。成果が示唆しているところは、MOFベースフォトディテクタの未来は明るいということである。その電子特性と安価な製造によりMOFレイヤは、多くのオプトエレクトロニックアプリケーションの有望な候補である。

「次のステップは層厚の縮小である。研究では、1.7 µmMOF膜を使用してフォトディテクタを作製した。それをコンポーネントに組み込むには、大幅に薄くする必要がある」。可能なら、目標は多層を70 nmに薄くすること、つまり25倍薄くなる。この層厚になっても材料は同等の特性を示さなければならない。研究グループが、このように非常に薄い層でも機能は同じままであることを証明できると、それを製造段階に展開できるようになる。