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ハーバードWYSS研究所、3Dプリント臓器に近道

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February, 13, 2020, Cambridge--犠牲インク書き込み技術により、大きな、血管を持つ人臓器構成要素(OBBs)の3Dプリンティングが可能である。
 米国では臓器移植待ちで毎日20人が死亡する。他方で年間30000以上の移植が行われているが、臓器ウエイティングリストには現在1130000以上の患者が登録されている。人工臓器は、の臓器不足を解消する「至高の目標」と見られている。3Dプリンティングの進歩は、その技術を利用する一つのブームになっている。とは言え、今日までの全ての3Dプリントヒト組織は、臓器修復や置き替えに利用するために求められる、細胞密度、臓器レベルの機能が欠如している。

ところで、ハーバードSEASの研究者が開発したSWIFT (sacrificial writing into functional tissue)と言う新技術が、幹細胞から採った臓器構成要素(OBBs)からなる生きたマトリクス脈管を3Dプリントすることにより、その主要な障害を克服する。これにより、高い細胞密度と機能を持つ、生存能力のある臓器特異的な組織が産出される。研究成果は、Science Advancesに発表された。

「これは、組織製造では全く新しいパラダイムである」とWyss Instituteの研究助手、論文の共同筆頭著者Mark Skylar-Scott, Ph.D.は言う。「細胞の価値がある臓器全体を3Dプリントしようとするのではなく、SWIFTは、大量のOBBsを含む生きた組織構造のサポートに必要な血管のプリントだけに取り組む。OBBsは、究極的には、人の臓器を患者自身の細胞を含む研究室で育成したバージョンで修復、置き換えるために治療的に利用される可能性がある」。

SWIFTは、二段階のプロセスを含む。幹細胞から採った数十万の集合体を稠密な生きたOBBsマトリクスに形成する。ここには1ミリリットルあたり約2憶の細胞が含まれている。次に、酸素や他の栄養素が細胞に送達される血管網を、犠牲インクを書き込み、除去することによってマトリクス内に埋めこむ。「これらのOBBsから稠密マトリクスを形成することは、一石二鳥である。人の臓器に類似の高細胞密度を達成するとともに、そのマトリクスの粘性によって広がる灌流チャネルネットワークのプリントが可能になる。これは人の臓器をサポートする血管を真似ることが目的である」とWyss Institute、SEASの研究助手、Sébastien Uzelは話している。

SWIFT法で使用された細胞集合体は、成人誘発多能性幹細胞から採った。これは、生マトリクスを作るために、遠心分離圧縮により、適合細胞外基質(ECM)溶液と混ぜている。低温(0-4 °C)では、稠密マトリクスはマヨネーズの濃度、細胞に損傷を与えることなく十分操作できる柔らかさであるが、形状を保つ程度の厚さであるので、犠牲3Dプリンティングに最適な媒質になる。この技術で、細いノズルがこのマトリクスを通して動き、損傷を与えることなく細胞を押し出すジェラチン「インク」を堆積させる。

低温マトリクスを37℃に加熱すると、それは硬化する(調理したオムレツのように)。一方、ジェラチンインクは溶けて、押し流すことができ、後には組織構成物内のチャネルネットワークが残る。これは、酸素化媒質で灌流させて細胞に栄養を与える。研究チームは、チャネル径を400 µmから1 ㎜まで変え、それらをシームレスに結合して組織内に分岐血管網を形成することができた。

SWIFTを使い内臓脈管でプリントされ、このように灌流される臓器特化の組織は、生存可能であるが、このようなチャネルなしで成長された組織は、12時間以内にその中核部で細胞死を経験した。組織が臓器特化の機能を示すかどうかを見るために、チームは、心臓から採った細胞で構成されるマトリクスに分岐チャネル構造をしみ込ませ、そのチャネルを通して一週間培養基を流した。その間、心臓OBBsが融合して、より隙間のない組織になる。その収縮は同時に起こるようになり、20倍以上強力になり、人の心臓の主要な特徴に似ていた。

「われわれのSWIFTバイオマニュファクチャリング法は、一次細胞の集合体から、幹細胞から採ったオルガノイドまでのOBBsから大規模に臓器特化組織を作る上で、極めて効果的である。幹細胞研究者からの最近の進歩と、われわれの研究室が開発したバイオプリンティング法を統合することで、SWIFTは、世界中の臓器エンジニアリングを大きく前進させる」とJennifer Lewisはコメントしている。
(詳細は、https://wyss.harvard.edu/)