コヒレント特設ページはこちら

Science/Research 詳細

環境に優しい太陽電池、錫ペロブスカイト

May, 16, 2014, Evanston--ノースウエスタン大学の研究チームは、光の取り込みに鉛のペロブスカイトの代わりに錫を用いる効率のよい新しい太陽電池を世界で初めて開発した。ローコストで環境にやさしい太陽電池は「ベンチ」化学を利用して簡単に作れる。手の込んだ装置や危険な材料は必要ない。
 「極めて有望な太陽電池、いわゆるペロブスカイトで先頭に立つブレイクスルーだ。錫は非常に発展性のある材料であり、われわれはその材料が効率的な太陽電池として使えることを示した」と錫を扱う専門家、無機化学者、Mercouri G. Kanatzidis氏は説明している。
 この新しい太陽電池はペロブスカイトと呼ばれる構造を用いるが、光吸収材料として鉛の代わりに錫を用いる。鉛ペロブスカイトは効率15%を達成しており、錫ペロブスカイトもそれに匹敵する、恐らくそれを超える効率達成が可能であると研究チームは見ている。ペロブスカイト太陽電池は「太陽光発電の次の有望株」と見なされており、この分野を再び活性化させている。
 現在、個体錫太陽電池の効率は6%以下だが、Kanatzidis氏は「出だしとしては非常によい」と語っている。この材料が特別である理由は2つある。1つは、可視光スペクトラムのほとんどを吸収できること、さらにペロブスカイト塩は溶解し、加熱せずに溶剤を除去して作り直せること。
 「この材料が15%を超える効率を達成できない理由はとこにもない。15%は鉛ペロブスカイト太陽電池の効率だ。錫と鉛は周期表の同じグループにあるので、同じ結果を期待している」(Kanatzidis氏)。
 固体錫太陽電池は5層のサンドイッチ構造になっている。最初の層は電気伝導ガラスで、太陽光が透過して電池に入ってくるようになっている。ガラスに堆積した二酸化チタンが次の層。この2つの層は太陽電池の電気前面接触層になる。次に錫ペロブスカイト、つまり光を吸収する層が堆積されている。これは窒素グローブボックス内で行われる。酸化を防ぐためにこのような保護された環境で行われる。
 その上にあるのはホール(正孔)を輸送する層、これは下層の錫を破壊しないように適切な化学物質が必要だった。ペロブスカイト構造の反応を理解することで、最適の化学物質は、置換ピリジン分子であると研究チームは判断した。この層もグローブボックス内で堆積された。続いて太陽電池を封止し外に取り出すことができる。金の薄い層が太陽電池サンドイッチを仕上げる。この層は太陽電池の裏面電極になにる。デバイス全体は1~2µm厚。
 研究チームはこのデバイスをテストし、パワー変換効率5.73%を記録した。
(詳細は、www.northwestern.edu)