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Science/Research 詳細

トリウム原子核の精密レーザ分光実現へ重要な一歩

December, 2, 2019, 東京--理化学研究所(理研)などの共同研究グループは、トリウム229(229Th:原子番号90、質量数229)原子核の準安定状態である「アイソマー状態」のエネルギーを決定した。

研究成果は、トリウム229原子核の精密レーザ分光を通じて、将来の原子核時計の実現につながると期待できる。

トリウム229の原子核は、基底状態からわずか数エレクトロンボルト(eV)のエネルギー領域にアイソマー状態と呼ばれる準安定状態を持っている。基底状態の原子核にレーザ照射してアイソマー状態を作り出せるのは、トリウム229の原子核が唯一と考えられるため、超高精度な「原子核時計」への応用の可能性などから注目を集めている。しかし、2007年までの既報のアイソマー状態のエネルギー値は、実験を行うグループの間で一致していなかった。

今回、共同研究グループは、この研究で開発した超伝導遷移端センサと呼ばれる高いエネルギー分解能のガンマ線分光器を用いて、トリウム229原子核から放射されるガンマ線のエネルギーを精密に測定し、アイソマー状態のエネルギーを8.30±0.92eVと決定した。この値は、2019年に異なる実験手法で測定された、他のニつの実験グループによる最新の測定値と一致した。

研究成果は、Physical Review LettersのEditors’ Suggestionに選ばれ、オンライン版に掲載された。
(詳細は、https://www.riken.jp/)
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研究グループ
理化学研究所(理研)開拓研究本部香取量子計測研究室の山口敦史研究員、理研仁科加速器科学研究センターRI応用研究開発室の羽場宏光室長、宇宙航空研究開発機構の満田和久教授、日本原子力研究開発機構の中村圭佑主査、東北大学の小無健司特任准教授、菊永英寿准教授、九州大学大学院の前畑京介准教授。