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チューナブル光チップ、新しい量子デバイスに道を開く

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October, 18, 2019, Washington--ジョージア工科大学の研究チームは、電気信号を印可することで熱的にチューニングできるSiCフォトニック集積チップを作製した。そのアプローチは、いずれ、大規模再構成可能デバイス実現に利用されることになる。例えば、ネットワーキングアプリケーションや量子情報処理に必要とされる位相シフタやチューナブル光カプラなど。
 ほとんどの光チップやコンピュータチップはシリコンでできているが、SiCへの関心が高まっている。熱的、電気的、機械的特性がシリコンよりも優れており、同時に生体適合的で可視から赤外までの波長で動作するからである。
研究成果は、Optics Lettersに掲載された。それによると、マイクロヒーターと、マイクロリング共振器と呼ばれる光デバイスをSiCチップにどのように集積したかが説明されている。この成果は、近赤外波長で動作する、初の完全集積、温度可変SiC光スイッチを示すものである。
 「われわれがこの研究で実証するようなデバイスは、次世代量子情報処理デバイスとして使え、また生体適合デバイスやプローブを実現することができる」と論文の筆頭著者、Xi Wuはコメントしている。
 SiCは特に、量子コピューティングや通信アプリケーションにとって魅力的である。光学的に制御でき、量子ビット(qubits)として操作できる欠陥を持っているからである。量子コンピューティング通信は、従来のコンピューティングよりも大幅に高速になるものとして有望である。データがqubitsとしてエンコードされるからである。これは、2つの状態が同時にどんな組合せでも可能であり、同時に大量処理できる」。

ウエハレベル製造
新しい研究成果は、チームの以前のプラットフォーム開発に立脚している。これは結晶SiC-on-insulatorと呼ばれており、これまでに報告したSiCプラットフォームの脆弱性と欠点の一部を克服している。同時に、電子デバイスとの集積が容易であり、信頼できるルートを提供している。
 「われわれが開発したSiC-on-insulatorプラットフォームは、半導体産業でアプリケーション多様化のために広く利用されているSi on insulator技術と同じである」と研究チームメンバー、Tianren Fanは話している。「そのため、SiCデバイスのウエハレベル製造が可能になり、SiCベース、集積フォトニック量子情報処理ソリューションの商用化に道が開ける」とAli A. Eftekharは話している。
 シングルチップベースの構造を利用して多様な機能を提供できるように、新しいプラットフォーム固有の機能をフルに利用するには、その光特性をチューニングする能力の開発が必要だった。研究チームは、熱光学効果を利用することでこれを達成した。ここでは、材料の温度が、その光学的特性、屈折率などを変える。
 研究チームは、結晶SiC-on-insulator技術を利用して、微小なリング形状の光キャビティ、マイクロリング共振器を作製することから始めた。各共振器では、ある波長の光、つまりその共鳴波長がリングを周回すると、強め合う干渉により力を蓄積する。すると共振器を使って、それに結合した導波路の光の振幅と位相を制御することができる。高い制御性をもつチューナブル共振器を実現するために、研究チームは、マイクロリング上に電気ヒーターを作製した。電流が集積されたマイクロヒーターに印加されると、SiCマイクロリングの温度が局所的に上昇し、熱光学効果により、その共鳴波長が変わる。

集積デバイスのテスト
 研究チームは、さまざまなレベルの電力加え、マイクロリング共振器に結合された導波路の光伝送を計測することで作製した集積マイクロリング共振器とマイクロヒーターの性能をテストした。その結果は、ロバストなデバイスで低電力温度同調により高品質共振実現が可能であることを示していた。これは、既存の半導体ファウンドリプロセスを利用して製造課のである。
 「われわれの結晶SiC-on-insulatorプラットフォームの他の固有の特徴と組み合わせると、これら高品質デバイスは、幅広い波長範囲で動作する新しいチップスケールデバイスを可能にする基本的要件を備えている。このチップスケールチューナビリティは、量子コンピューティングや通信向に必要な量子演算の実行にとって重要である。また、SiCは生体適合であるので、体内バイオセンシングにも極めて有用である」とAli Adibiはコメントしている。
 研究チームは現在、量子フォトニック集積回路を結晶SiC-on-insulatorの要素構築に取り組んでいる。これにはオンチップ励起レーザ、シングルフォトン光源、シングルフォトンディテクタが含まれる。これらは、最先端の光量子コンピューティング向けフル機能チップを実現するためのチューナブルマイクロリングとともに使用される。