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レーザで磁石が液体のような挙動

July, 11, 2019, Boulder--何年も前から研究者は、奇妙な現象を探求してきた。超薄型磁石にレーザ照射すると、急に消磁する。
 CU Boulderの研究チームは、磁石が、その変化からどのように瞬時に回復し、その特性を取り戻すかを研究している。
 Nature Communicationsに発表された成果によると、レーザ照射された磁石は、実際に液体の様に振る舞う。その磁気特性は、「液滴」を形成し始める。ジャーの油や水を振った時に起こる現象と同じである。
 それを調べるために、CU Boulderの Ezio Iacocca、Mark Hoeferのチームは、数学モデリング、数値シミュレーション、実験を利用した。実験は、スタンフォード大学のSLAC国立加速器研究所で行った。
 特に、研究グループは、磁気、金属合金が短パルス高エネルギーレーザ照射を受けた後の磁石の非常に短い時間、最初の1兆分の20秒に狙いを定めた。 
 磁石は、本質上、極めて組織化されている。その原子構成要素は、配向性、つまり「スピン」があり、上か下のいずれか、同じ方向を指す傾向がある。
 ただし、レーザで磁石を照射したときは除く。磁石を極短パルスで照射すると、無秩序が確実になる。磁石内のスピンは、もはや上または下を指すことはなく、全て異なる方向になり、金属の磁気特性は失われる。
 「研究チームは、レーザパルス後、3psに起こること、さらに数ミリ秒(ms)で磁石が均衡に戻る時のことに取り組んでいる。、その間に、多くの未知のことがある」とNIST客員研究者、Iacoccaは言う。
 それは、Iacoccaとその同僚が埋めたかった失われた時間のウインドウである。そのために研究チームは、カリフォルニアで一連の実験を行った。ガドリニウム-鉄-コバルト合金の微小な粒子にレーザを照射。次に、その結果を数学的予測およびコンピュータシミュレーションと比較した。
 グループが発見したことは、流動化である。応用数学准教授、Hoeferは、金属そのものが液体に変わったのではないと素早く指摘した。しかし、その磁石内のスピンは、液体のように振る舞い、動き回り、海で砕ける波のように方向を変える。
 「われわれは、これらのスピンが、その短い時間スケールで超流体のように振る舞うことを示す、これらのスピンをモデル化する数学的方程式を使った」とHoeferは言う。
 しばらく待つと、その彷徨うスピンは落ち着き始め、同じ方向の小さなクラスタを形成する。要するに、スピンがみな、上または下を指す「液滴」である。もう少し長く待ち、研究チームは、それらの液滴がどんどん大きくなることを計算で示した。ジャーの中で分離する油や水と比較した。
 「ある点では、磁石は再び上または下を指し始める。これらは、もっと大きな集団のシードのようである」とHoeferは言う。
 同氏によると、レーザを照射した磁石は、常にそれの元の状態に戻るわけではない。場合によっては、磁石はレーザパルス後、反転することがある、つまり上から下へ変わる。
 エンジニアは、その反転挙動を利用してコンピュータハードディスクに1sと0sのビット形式で情報保存を行っている。その反転をもっと効率的にする方法を考えついたら、より高速のコンピュータを構築することができるかも知れない。
 「このプロセスが起こる方法を正確に理解したい理由はそれである。恐らく、もっと速く反転する材料を見つけることができる」とIacoccaは話している。
(詳細は、https://www.colorado.edu)