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反強磁性交換相互作用に起因するダブロン―ホロン間引力の発見

June, 13, 2019, 東京--強相関電子系において電荷とスピンの自由度の相互作用(電荷―スピン相互作用)は重要な役割を果たすことが知られており、さまざまな特徴的物性が現れる要因となっている。
 例えば、銅酸化物高温超伝導体におけるクーパー対の形成は、スピン間に働く反強磁性交換相互作用Jによる引力に起因することが指摘されている。高温超伝導体の母物質である二次元モット絶縁体では、光励起によってダブロンとホロンという電荷キャリアが生成するが、この両者の間にもクーパー対の形成と同様の機構による引力の効果で励起子的な束縛状態が形成されると予想されていた。しかし、これまで、その実験的な証拠は得られていなかった。

産総研、東京大学、東京工業大学、東京理科大学などの研究グループは、テラヘルツパルスを利用した電場変調反射分光法を異なるJの値を持つ三種の銅酸化物Nd2CuO4, Sr2CuO2Cl2, La2CuO4に適用することにより、二次元モット絶縁体中のダブロンとホロンの引力の起源を調べた。三種の物質において、電場印加による反射率スペクトルの変化を解析することにより、Jの増加に伴いダブロン―ホロン間の引力(束縛エネルギー)が増加することを明らかにした。実際に、このような傾向をt-Jモデルによる理論計算によって説明することができた。
 研究結果は、ダブロンとホロンが高温超伝導体のクーパー対と同様にスピン間に働く反強磁性交換相互作用の効果で束縛状態を形成することを明確に示している。

この発見は、強相関電子系における光励起状態の非平衡ダイナミクスや高温超伝導体の発現機構など未解明の問題に対する深い理解につながることが期待されまる。

研究成果は、Science Advancesにオンライン掲載された。
(詳細は、https://www.titech.ac.jp/)

(注) モット絶縁体
固体において、価電子帯が半分または部分的にしか満たされていない場合、通常のバンド理論では金属状態となる。しかし、電子間に強いクーロン相互作用が働く場合は、電子は互いを避け合って各サイトに局在して絶縁体となる。この時、元のバンドは上部ハバードバンドと下部ハバードバンドに分裂し、エネルギーギャップが生じる。このような絶縁体を、モット絶縁体と呼ぶ。
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研究グループ
産業技術総合研究所 産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 有機デバイス分光チーム(兼 東京大学 大学院新領域創成科学研究科 客員研究員)の寺重 翼 産総研特別研究員(研究当時)、東京大学 大学院新領域創成科学研究科の宮本 辰也 助教、貴田 徳明 准教授、岡本 博 教授(兼 産業技術総合研究所 産総研・東大先端オペランド計測技術オープンイノベーションラボラトリ 有機デバイス分光チーム ラボチーム長)、産業技術総合研究所 電子光技術研究部門 強相関エレクトロニクスグループの伊藤 利充 研究グループ長、東京工業大学 科学技術創成研究院 フロンティア材料研究所の笹川 崇男 准教授、東京理科大学 理学部 第一部応用物理学科の遠山 貴巳 教授