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Science/Research 詳細

小型集積可能なフォトダイオードで受光感度21.8A/Wを達成

March, 5, 2019, 東京--NEDOと技術研究組合光電子融合基盤技術研究所(PETRA)、沖電気工業(OKI)は、光信号を電気信号に変換する素子であるフォトダイオードの小型化と高感度化を両立させる技術の開発に成功し、シリコンフォトニクス技術により他の光素子と集積可能なフォトダイオードとして、1600nm波長帯の光に対して世界最高となる21.8A/Wの受光感度を達成した。この技術は、第5世代移動通信(5G)ネットワークのスモールセル基地局装置に搭載される光通信ユニットの超小型化・低消費電力化に貢献する。
 一般に、APDでは、受光に伴って発生する電子の流れを、電界をかけた増倍領域において増幅することにより高い受光感度が得られる。これまで化合物半導体を用いたAPDでは、非常に高い受光感度が達成されていたが、他の光素子との集積化は難しく、製造コストも高くなる課題があった。一方、他の光素子との集積化が容易で、製造コストを安価にできるシリコンフォトニクス技術を用いたAPDでは、シリコン光導波路上に増倍領域とゲルマニウムからなる光吸収領域を順次積み重ね、さらに光吸収領域の上に電極を設ける構造が報告されていたが、十分な受光感度を得ることができなかった。
 今回開発したフォトダイオードでは、光アクセスネットワークで近年利用が始まった1600nm波長帯の光に対して高い受光感度を得るために、ゲルマニウム光吸収領域上に電極を持たない構造をとることにより、光吸収領域における光損失の低減を図った。その結果、シリコンフォトニクスにより他の光素子と集積可能な構造のフォトダイオードとして、1600nm波長帯の光に対して世界最高となる受光感度21.8A/Wを実現して、5Gネットワークに十分適用可能な性能を達成した。
 また、増倍領域をシリコン光導波路の中に設ける独自のシンプルな構造を採用したことにより、大量生産技術が確立している安価なCMOSプロセスでの製造が可能となった。
 今回開発したフォトダイオードを、光波長フィルタ、光変調器、送信用光源など他の光素子とともに集積すると、数mm角の超小型光送受信集積チップとなる。今後は、5Gネットワークのスモールセル基地局装置に内蔵できるよう、この光送受信集積チップを実装した超小型光トランシーバーの開発を進めていく。
 また、この集積チップの小型特長を生かして、分光機能を集積した光学分析チップの受光素子など、センサ応用への展開も進めていく。
 PETRAとOKIは、開発成果について、2019年3月3日から3月7日に米国カリフォルニア州・サンディエゴで開催される世界最大級の光通信関連の国際学会「OFC(Optical Fiber Communication Conference)2019」で発表する。