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X線を使い3Dイメージングを改善する新方法を開発

February, 20, 2019, Washington--オーストラリア国立大学のAndrew Kingston氏をリーダーとする研究チームは、フランスのヨーロッパシンクロトロン放射ファシリティのチームとともに、ゴーストイメージングとして知られる、これまでにないイメージングアプローチを使って、可視光に不透明な対象内部の3D X線画像を取得した。
 研究チームは、X線を使って3D画像を生成する2つの新しいアプローチを報告している。この方法は、病気のスクリーニング、超高速プロセスを改善し、材料の特性分析と不透明な対象の構造情報の分析を前例のない詳細さで可能にする。
 研究成果は、Opticaの2つの論文に発表された。1つの方法は、ある種の予防イメージング、乳ガンスクリーニングなどでX線量を減らす。もう1つの方法は、繊細なバイオサンプルの3Dイメージング、あるいは宇宙の廃棄物衝撃で起こる相互作用など非常に高速のプロセスの研究で、耐久性の高い開発が促進される。
 高エネルギーと短波長のために、X線は、可視光が透過できない物質を透過する。3D X線画像の取得はできるが、現在のアプローチは、損傷を与えるX線への長期露光を必要とするために、アプリケーションに制限がある。
 人では、医療用X線イメージングからの照射が多すぎると、ガンのリスクが高くなるので、3Dマンモグラフィや他の3D X線技術を受ける頻度が制限される。材料や生物サンプルの詳細な組成を調べるために利用される非常に高エネルギーのX線は、1回の露光でサンプルが破壊されるので、使えないことがある。

X線による3Dゴーストトモグラフィ
 新しいアプローチは、単一露光、つまりショットを使ってX線から3D情報を得る、これは病院のX線よりも1000億倍高輝度である。そのX線は、特別なシンクロトロンファシリティでしか生成できない。
 「高輝度X線光源は、生物学や材料科学には極めて有用である、より高速のプロセスを調べることができ、他のX線光源と比較して高輝度だからである。これらの光源のパワーは、シングルパルスでサンプルを破壊するので、これらの光源のフルパワーを使う現在の3Dイメージングは、サンプルの同一複製物を多数必要とする」と論文の筆頭著者、DESYのPablo Villanueva-Perez氏は説明している。
 新技術は、サンプルを破壊する前に3D画像形成に必要な測定を行うことができる。したがって、生きた昆虫など繊細な生物サンプルの機構の研究、完全なウイルスやタンパク質の内的3D構造の研究に有用である。
 新しいシングルショットアプローチは、結晶を使って一つの入力X線ビームを9ビームに分ける。これらは同時にサンプルを照射する。各ビームからの情報を記録するように方向付けられたディテクタを利用することで研究者は、サンプル対象の9個の異なる2D投射を同時に取得する。これは高強度X線プローブビームによってサンプルが破壊される前である。
 研究チームは、そのアプローチを使って、蛾を撮像した。これは、マイクロ秒~フェムト秒のスピードで、昆虫の構造を3Dマイクロスケール分解能で研究できることの実証である。
 「われわれは、この技術とヨーロッパX線自由電子レーザファシリティ固有の能力を統合することを考えている、このファシリティは、1秒に100万パルスでX線パルスを放射できる初のファシリティである。これにより,1秒に数100万フレームの高速プロセスの3D研究が可能になる」とVillanueva-Perez氏は話している。
 研究チームは、そのシングルショット・マルチプロジェクションイメージング技術を昆虫の生体構造の理解向上に役立てることを計画している。これが新たなエンジニアリングセットアップの一因になる可能性がある。また、自動車の低燃費化に寄与する新しい軽量材料の研究、保護材の研究に寄与する、人工衛星に衝突する宇宙廃棄物の高速プロセスの研究を計画している。