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テラヘルツ波を用いた炭酸塩鉱物の定量法を開発

February, 13, 2019, 東京--海洋研究開発機構(JAMSTEC)生物地球化学研究分野の坂井三郎技術研究員らは、パデュー大学、浜松ホトニクス、東京大学及び広島大学と共同で、テラヘルツ(THz)時間領域分光法により、炭酸塩鉱物の結晶構造を高感度に定量できることを明らかにした。

天然に存在する主要な炭酸塩鉱物である高マグネシウム(Mg)方解石、低Mg方解石、アラゴナイト及びドロマイトは、大理石やサンゴ等の地球や生命の骨格を構成する主要鉱物であり、その識別や定量は、地球惑星科学をはじめ、医薬、産業分野等の観点からも重要。これまで、これらの炭酸塩鉱物の識別と定量にはX線回折法(XRD)が用いられてきた。近年、結晶格子の振動に起因する吸収特性を感度よく観測できるTHz波領域の吸収分光が可能となり、エックス線と比べて安全なTHz波を用いた結晶学的解析への応用が期待されていたが、一部の検出例があるのみであった。

研究チームは、広帯域THz時間領域分光法(0.5~7 THz)により、炭酸塩鉱物の吸収特性を全反射測定法により計測し、高Mg方解石、低Mg方解石、アラゴナイト及びドロマイトに特徴的な吸収スペクトルが取得できることを明らかにした。また、得られた各吸収スペクトルに基づいて、測定サンプルにおけるそれぞれの含有率を求めることに成功し、アラゴナイト中の極微量の低Mg方解石(1%以下)の高感度の検出も可能であることを示した。従来法であるXRDを超える感度を実現することにより、例えば過去の水温指標である方解石のMg/Ca比や、過去の海洋環境の記録媒体として重要なサンゴ骨格の変質度を評価するための新しい方法として活用が期待できる。

 この分光法で用いる光源は、安全なTHz波であり、取扱いの面からもXRDよりも優位である。今後、THz波領域における炭酸塩鉱物の標準スペクトルとして、地球惑星科学分野のみならず、これまでよりも詳細な医薬品中の成分分布、製紙等の充填材の評価、文化財絵画の白色顔料中の炭酸塩成分評価等への応用が可能である。

研究成果は、米科学誌「ACS OMEGA」に2019年2月6日付け(日本時間)、オープンアクセスで掲載された。
(詳細は、http://www.jamstec.go.jp)