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ホログラフィ、明視野技術の組合せで実用的な3Dディスプレイが可能

December, 13, 2018, Washington--デジタルコンテンツとのほとんどの相互作用は、まだキーボードや2Dタッチパネルに強いられているが、拡張現実や仮想現実(AR/PR)技術は、こうした制限からこれまで以上に解放される見込がある。
 AR/VRデバイスは、長く利用すると視覚的乗り物酔い、あるいは他の視覚障害を誘発する傾向など、固有の欠点がある。これは、その立体視覚あるいは裸眼立体ベースの設計によるものである。見込がある1つのソリューションは、代わりに、ホログラフィ、ライトフィールド(明視野)技術をデバイスに適用することである。しかし、これは追加オプティクスが必要になり、これらデバイスのサイズ、重量、コストが増える。このようなデバイスがこれまで商用で成功しなかった課題である。
 今回、より人に優しいAR/VRデバイスのサイズとコストを低減する方法として、日本とベルギーの研究グループが、ホログラフィとライトフィールド技術の組合せを探求し始めた。
 「われわれが周囲に見ている物体は、光を様々な方向に、異なる強度で散乱させる。これは、サイズ、厚さ、距離、色、構造など物体の特性に規定された方法で散乱される」と日本の情報通信研究機構(NICT)の研究者、Boaz Jessie Jackinは話している。「次に、人の目が変調された(散乱された)光を受け取り、その特性が人の脳で再構成される」。
 物理的対象なしで、同じ変調光を生成することができるデバイスは、真の3Dディスプレイとして知られている。ホログラフィとライトフィールドディスプレイは、これに含まれる。「対象物の特徴の全てを忠実に再現すること、いわゆる“変調”は非常に高価である。求められる変調はまず、数値計算され、次にLCDによって光信号に変換される。これらの光信号は、次に他の光コンポーネント、レンズ、ミラー、ビームコンバイナなどでピックアップされる」とJackinは説明している。
 追加の光コンポーネントは、通常ガラス製であり、重要な役割を果たす。それらがディスプレイ機器の最終性能とサイズを決めるからである。
 ここが、ホログラフィック光学素子が大きな違いを生むところである。「ホログラフィック光学素子は、感光性材料の薄いシートであり、一個以上の追加光コンポーネントの機能を再現できる。大きくなく、重くないので、より小さな形状に適用可能である。それらの製造は新たな課題であったが、われわれはソリューションを開発した」とJackinは言う。
 記録すること、ガラス製光コンポーネントの機能を複製できるホログラムは、記録プロセス中に、その特殊光コンポーネントが物理的に存在することを必要とする。この記録は、レーザと記録フィルムに依存するアナログプセスであり、デジタル信号、情報は利用されない。
 「多数の光コンポーネントを記録するとは、それらのすべてが記録プロセス中に存在することを必要とする、つまりほとんどの場合、それは複雑になり、不可能である」。
 研究グループは、ホログラムをデジタル的にプリント/記録することにした、つまり「デジタル的に設計されたホログラフィック光学素子(DDHOE)である。研究グループは、記録中に光コンポーネントが物理的に存在することを全く必要としないホログラフィック記録プロセスを利用する、とは言えすべての光コンポネントの機能は記録可能である。
 「その考えは、すべての光学機能のホログラムをデジタル的に計算すること、さらにLCDとレーザを使ってそれらを光学的に再構成するというものである。この再構成され光信号は、その光コンポーネントすべてによって、他の方法で変調された光に似ている。再構成された光は、今度は最終ホログラフィック光学素子を記録するために使用される。再構成された光はすべての光学機能を持っているので、感光性フィルム上の記録されたホログラムは、それらの全機能で光を変調することができる。したがって、必要とされる追加オブティクスのすべては、単一のホログラフィックフィルムによって置き換え可能である」と同氏は説明している。
 アプリケーションでは、研究グループはすでにDDHOEをヘッドアップライトフィールド3Dディスプレイでテストした。同システムはシースルーであるので、拡張現実(AR)アプリケーションに適している。
 「われわれのシステムは、市販の2Dプロジェクタを使ってマイクロレンズアレイシートに一連のマルチビュー画像を表示する、これは通常ならガラスかプラスチックである。シートは、プロジェクタから光を受け、それを変調して空間に3D画像を再現する。したがってマイクロレンズアレイを通して見ている人は、3Dで画像を認識するのである」。
 グループのアプローチが克服すべき大きな問題点は、2Dプロジェクタからの光が発散することである。空間に3D画像を正確に再現するためにには、光がマイクロレンズアレイに入る前に並行ビームにコリメートされなければならない。
 「ディスプレイが大きくなるにつれて、コリメートレズも大きくなる。これは、大きくて重いレンズになり、長い光学パス長を使うシステムとなり、またコリメートレンズの製造も高価になる。そのようなシステムが商用成功することを阻む主要なボトルネックである」。
 研究グループは、レンズアレイそのものにコリメート機能を組み込むことで、コリメートオブティクスの必要性を完全に回避する。マイクロレンズアレイは、コリメート機能を含むDDHOEとして作製されている。
 研究グループは、ヘッドアップ、シースルー3Dディスプレイの実現に進んでいる。間もなく、大きなコリメートオブティクスを使う現在のモデルの代替を提供できるようになる。