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ナノスケールの光による新しい電子輸送現象を解明

December, 4, 2018, 東京--マックス・プランク協会 フリッツ・ハーバー研究所 物理化学部門の熊谷崇 グループリーダーの研究チームは、独自に開発した高精度の光励起・検出が可能な低温走査トンネル顕微鏡(STM)の先端計測技術を用いて、ナノスケールの光である局在表面プラズモンの励起を介した共鳴トンネル型電子輸送現象の観測に成功した。
 ナノサイエンスの研究分野で広く使われているSTMは、ナノ空間に閉じ込められた光と物質の相互作用を原子レベルで調べることができる計測手法として活用されている。従来の研究ではトンネル電子によるSTM接合内の局在表面プラズモンの励起を介した発光現象に関する報告などがされていた。しかし、集光した光を入射した場合に励起される局在表面プラズモンが、ナノスケールの接合内で電子の輸送現象にどのような効果を与えるのかは明らかにされていなかった。
 研究グループは光と物質の相互作用を原子、分子スケールで直接調べることを目的として、STM接合をレーザ光によって高精度に照射できる新しい装置を開発した。今回の実験では銀および金の探針と銀単結晶表面のSTM接合で局在表面プラズモンを励起することによって、探針側の電子が共鳴的に銀表面側へとトンネル輸送される新たな物理現象を発見した。
 局在表面プラズモン励起を介した電子輸送は、ナノスケールのオプトエレクトロニクスデバイスやプラズモニック太陽電池、プラズモニック触媒など多岐にわたる応用が期待されている。今回の発見はこれらの分野に貢献する重要な基礎科学的知見を与えた。また、今回開発したSTMの先端計測技術によって、今後ナノスケールの光と物質の相互作用に関する新たな物理現象の発見も期待される。
 研究成果は、Physical Review Lettersに掲載された。
(詳細は、http://www.jst.go.jp)