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タフツ大学、光に反応して動く新材料を開発

September, 5, 2018, Medford/Somerville--タフツ大学工学部(Tufts University School of Engineering)の研究チームは、光露光により多様な動きをする磁気エラストマ複合材を開発した。これらの材料により、単純な動きから複雑な動きをする幅広い製品を実現する可能性が開ける。例えば、微小なエンジン、バルブから太陽光の方に曲がるソーラアレイまで。研究成果は、国立科学アカデミィ(National Academy of Sciences)の論文に収録されている。
 生物学では、光が運動を誘発したり、変えたりする例が多い。この研究で造られた光が作動する材料は、キューリ温度の原理に基づいている。磁気材料を加熱、冷却することによって、その磁気をON/OFFできる。強磁性体CrO2をドープされたバイオポリマやエラストマは、レーザや太陽光の露光で加熱し、再び冷却されるまで、一時的に磁気特性を失う。膜、スポンジ、ハイドロゲル形状にした材料の基本的な動きは、手近な永久磁石、電磁石によって誘発され、曲げ、捻れ,拡張を示すことができる。
「われわれは、これらの単純な動きを組み合わせて、もっと複雑な動き、這う、歩く、泳ぐなどにできる。こうした動きは、光を使ってワイヤレスで始動させたり、制御したりすることができる」とFiorenzo Omenettoは説明している。
 研究チームは、光照射に反応して対象物をつかんだり、離したりするソフトグリッパを造ることでこれらの複雑な動きの一部を実証した。「こうした材料の利点の1つは、局所的な光、あるいは集光した光を使って構造物の一部を選択的に作動させ、制御できることだ」と論文の主筆、Meng Liは言う。「液晶ベースの他の光駆動材料と異なり、これらの材料は、光の方向に、あるいはそれから遠ざかる方向に動くように造れる。これらの特徴の全てをまとめると、複雑な、協調運動でモノを大きくしたり小さくしたりする能力になる」。
 この多様性を実証するために研究チームは、単純な「キューリエンジン」を作製した。光作動膜がリングになったり、針の上に乗ったりした。永久磁石の近くに置かれると、レーザ光がリングの固定スポットに集光されたとき、そのリングの一部を局所的に消磁し、リングを回転させる不平衡合力を作る。回転しながら、消磁スポットが再び磁化されると、新しいスポットが照射され、消磁され、エンジンは連続回転する。
 光作動材料を造るために使用された材料には、ポリジメチルシロキサン(PDMS)が含まれている。これは透明エラストマに広く用いられており、フレキシブル膜となることが多い。また、シルクフィプロインも含まれている。これは、多様な生体適合材料であり、優れた光学特性を持ち、膜からゲル、糸、ブロック、スポンジまで多様な形状に造れる。
「材料パタニング、光パタニング、磁場制御を加えると、理論的にはもっと複雑で微調整された動き、例えば折り畳み、開放、マイクロ流体バルブスイッチング、マイクロおよびナノサイズエンジンなどが実現できる」とOmenettoは話している。
(詳細は、https://now.tufts.edu)