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Science/Research 詳細

現実的条件下で対象物を見えなくするスペクトルクローキング

July, 31, 2018, Washington--Opticaに発表された新しい研究によると、物体を透過する光波の周波数の操作に基づいたインビジブルクローク(隠れ蓑)が初めて実証された。これは、既存のクローキング技術の重要な欠点を克服する、基本的に新しいアプローチである。
 このアプローチは、光ファイバで伝送されるデータ保護にも適用可能であり、センシング、通信、情報処理技術の改善にも役立つ、と研究グループは説明している。このコンセプトは、理論的に、あらゆる方向から3D物体を見えなくするように拡張可能である。これは、実用的なインビジブルクローキング技術の発展における大きな前進である。
 ほとんどの現在のクローキングデバイスは、対象物が光の一つの波長で照射された時にのみ関心のある対象を完全に隠すことができる。しかし、太陽光やほかのほとんどの光源はブロードバンドであり、多くの波長を含んでいる。新しいデバイスは、スペクトル・インビジブルクロークと言い、ブロードバンド照射で任意の対象物を完全に隠すことができるように設計されている。
 このスペクトラルクロークは、光波のある波長からのエネルギーをほかの波長に選択的に移動させることによって動作する。その波が対象物を透過した後、デバイスは光を元の状態に戻す。研究成果は、Opticaに発表された。
 カナダ、モントリオール、National Institute of Scientific Research (INRS)のJosé Azañaは、この研究成果をインビジブル・クローキングにおけるプレイクスルーだとして、「われわれは実際のブロードバンド照射下で対象となるものを完全に見えなくした。照射波を対象物に透過させ、検出できるような歪もなく、まさに対象物とクロークが存在しないかである」とコメントしている。

対象を見るとき、実際に見ているものは相互作用するモノが光波のエネルギーを変更する仕方である。インビジブルクロークのほとんどのソリューションは、波がモノを透過するのではなく、回り込んで進むように光が進むパスを変える必要がある。ほかのアプローチ「時間的クローキング」は、光の伝搬速度に手を加える。これは、所定の時間幅で、光ビームを透過させる時に対象物が一時的に隠されるようにするためである。
 いずれのアプローチでも、入射光波の異なる波長はクローキングデバイスを透過する際に、進むパスが違っていなければならない。つまり目標に達するまでの時間が異なる。その波の時間プロファイルのこうした変化により、観察者は、あるべきものが存在しないように捉える。
 研究チームは、光波が対象物を透過して伝播し、実際に「見える」ことがないようにブロードバンド光の異なる色を再整理する方法を開発することで、これを実現した。そのために、クローキングデバイスはまず、光が対象物を透過することによって影響されないスペクトル領域に光をシフトさせる。例えば、対象物が緑の色を反射するなら、スペクトルの緑の部分の光は青にシフトされ、反射される緑の光がなくなるようにする。次に光波が対象物を通過すると、クローキングデバイスは、そのシフトを元に戻し、元の状態で光波を再建する。
 研究チームは、光フィルタを隠すことによってそのアプローチを実証した。それは、レーザ短パルス光で照射すると、所定の光を吸収し、ほかの光を透過させるデバイスである。
 クローキングデバイスは、2つの市販入手可能な電気-光コンポーネント2組で構成されている。第1コンポーネントは分散光ファイバで、これによってブロードバンド波の様々な色が異なるスピードで伝播する。第2は、時間的位相変調器で、これは、波がそのデバイスを透過する時に依存して光の周波数を変える。これらのコンポーネントの一組は、光フィルタの前に置かれ、他方の一組はその後に置かれた。
 デバイスは、光フィルタで吸収されていた周波数範囲の光波を変換し、光が他端のフィルタを出るときにそのプロセスが完全に反転することが実験的に確認された。すなわち、レーザパルスは、非吸収媒体を通って伝播したかに見える。

クローキングの実用
 新しい設計がハリーポッタ型の身につけるインビジブルクローク(隠れ蓑)になるには、さらなる開発が必要である。実証されたスペクトルクローキングデバイスは、セキュリティ目的では有用である。例えば、現在の通信システムはブロードバンド波をデータ信号として使用して情報を転送、処理する。特殊なクローキングを使用して、どのオペレーションがある光波に適用され、どれが、それに対して「見えなくさせられる」かを一定時間で、選択的に決めることができる。これにより、ブロードバンドの光ネットワークを調べることによって情報を収集する盗聴を防ぐことができる。
 可逆的な、ユーザ定義のスペクトルエネルギー再配分という包括的な概念には、インビジブルクローキングを超えたアプリケーションも見いだせる。例えば、通信データ信号として利用されるブロードバンド波の色を選択的に除去して元に戻すことによって、所定のリンクでより多くのデータを伝送でき、データ需要の増加にともなう行き詰まり緩和に役立つ。あるいは、その技術は、今日のブロードバンド通信リンクの重要問題の一部を最小化するために使える。例えば、信号エネルギースペクトルを再編して、データ信号に悪影響を及ぼす、分散、非線形現象、そのほかの望まない効果の影響を低下されることができる。
 研究チームは、1つの空間方向からのみの対象の照射でスペクトルクローキングを実証したが、このコンセプトをあらゆる方向からの照射で対象を見えなくするように拡張できるはずだと、Azañaは主張している。

詳細は、下記論文
Paper: L. Romero Cortés、 M. Seghilani、 R. Maram、 J. Azaña、 “Full-field broadband invisibility through reversible wave frequency-spectrum control、” Optica、 5、 779-786 (2018). DOI: https://doi.org/10.1364/OPTICA.5.000779h