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ソーラパネルイノベーション、同時に植物成長とエネルギー生成に寄与

July, 19, 2018, 合肥市--中国科学技術大学(USTC)先端技術研究所、Jan Ingenhoff研究教授は、耕地が限られている国々では、太陽パネル導入は現実的なソリューションではない、と言う。
 この問題を解決するために、USTC同教授の研究チームは、農業太陽光集光型太陽光発電(Agriculture Solar Concentrator Photovoltaic)を開発した。これは、同じ土地で植物の生育と太陽エネルギー生成が同時にできる、新しいタイプの太陽パネルシステム。
 研究チームは、現在、中国に実用レベルのプロトタイプを4システム導入した。
 2019年と2020年に、さらに2システムを導入する予定であり、同システムの商用販売に向けて作業を進めている。
 その目的で、中国にスタートアップ、Fuyang Angkefeng (China) Optoelectronic Technology Co.、を設立した。
 同システムは、Ingenhoffの説明によると、植物は実際には太陽光の100%を必要としていないという考えに基づいている。
 「植物は、光の約10%、青色と赤色を必要とするだけである。残りは太陽エネルギー生成に利用できる。そのソーラパネルは半透明にできる。一部の光は透過し、植物生育に利用、残りは太陽エネルギーに利用する」と同氏は説明している。
 そのシステムは、湾曲ソーラパネルを利用する、パネルはポリマ多層でできた膜で覆われており、これがダイクロイック多層膜となる。これにより、光合成と植物生育に必要な波長だけを選択的に透過する。残りの太陽光は反射され、集光型太陽電池に集めてPV電力生成に使われる。デュアルトラッキングシステムにより、反射波は確実に、終日、集光型太陽電池に集光される。
 システムは、季節に合わせて調整可能でもある。
 冬期には、生成された電気を追加で利用して、赤と青のLEDにより植物に光を供給できる。夏季には太陽光が主に電力生成に使われるように光の分離比を変える。植物生育にマイナスの影響は何もない。
 太陽光が太陽エネルギー生成と植物とに分離される仕方は、植物の特定ニーズで調整可能である。
 「例えば、トマトは赤い光の方を多く必要とし、レタスは青い光を多く必要とする。これらの植物に合わせて、その必要性に対して厳密に調整可能である。農業生産者にとってはそれは非常に大きなメリットである。あるものはイチゴを、あるものはトマトを生産したいからである」。
 現在、このシステムは1平方メートルあたり約90Wのエネルギーを生成できるが、研究チームは、植物が必要とする光の量をもっと正確に透過できるように最適化し、エネルギー生成を増やそうとしている。研究チームは、いずれ120~130W/㎡のエネルギーを生成できるようになると見ている。
 太陽エルギー生成だけでなく、Agriculture Solar Concentrator Photovoltaicは、特に干ばつに見舞われた地域では、植物生育促進にも使える。
 「5~10年前には人々は、青と赤の光だけで植物を育てることについては心配していた。直観では、植物はすべての光を必要とすると思われたからである。しかし、青色と赤色光だけで植物は非常によく成長し、しかも生育がよいことが多くの研究で明らかになった。この理由の一つは、植物から近赤外光(NIR)と遠赤外光(FIR)を遮断すると、植物を熱から守り、農地の水の蒸発を減らせることがある。この生育システムで、植物は成長が促進される可能性がある」とIngenhoffは説明している。
 研究チームは、レタス、キュウリ、エンツアイをフィルムありとフィルムなしで育て、フィルムありの方が生育がよいことを確認した。フィルムありとなしでは、それぞれ、レタスは17.59㎝、12.83㎝、キュウリは15.50㎝、15㎝、エンツアイはフィルムありが12.67㎝、なしが11.160㎝だった。
 研究チームは、生産者からのフィードバックに基づいて、現行システムを調整する計画である。また、システムが劣化することなく長期に持ちこたえ、簡単に掃除と保守ができるように保証する必要がある。