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Y-00光通信量子暗号の雑音による秘匿効果を高める光変調方法を実証

May, 15, 2018, 町田--玉川大学 量子情報科学研究所の谷澤健准教授と二見史生教授は、Y-00光通信量子暗号のための光の変調方法を新たに提案し、電気デジタル・アナログ変換デバイスの限界を打破する、極めて多くの光強度をもつ暗号を発生させる実証実験に成功した。
 この方法により、デジタル・アナログ変換デバイスによるこれまでの制限にとらわれることのない、高い安全性と高速通信性能の両立が期待できる。
 研究成果の詳細は、「CLEO 2018 (Conference on Lasers and Electro-Optics 2018)」で発表される。

研究成果
玉川大学は、光通信の伝送路の安全性を高めるY-00光通信量子暗号の研究に基礎理論の確立から応用展開まで一貫して取り組んでいる。Y-00光通信量子暗号では、暗号鍵を用いて、データ信号(平文)を多くの異なる光強度に変換することで暗号化を行う。隣接する光強度が近づくと受信時の光-電気変換で生じる量子雑音の影響で、鍵をもたない盗聴者は正確な平文を復元することができない。この秘匿効果は、隣接する光強度をどれだけ近づけることができるか、つまり、いかに多くの異なる光強度を作り出すことができるかに依存している。これまでは、その数が電気デジタル・アナログ変換デバイスの性能で制限されてきた。今回、複数の電気デジタル・アナログ変換デバイスの出力を光の領域で多重化して光強度に変調する方法を提案した。これにより電気デジタル・アナログ変換デバイスの性能に依存しないY-00光通信量子暗号の発生が可能となる。
 実証実験では、214(=16,384)という「極めて」多くの異なる光強度にて、10Gbpsの高速データ信号を暗号化することに成功した。単一のデジタル・アナログ変換デバイスで発生できる光強度の数は210(=1,024)程度であり、提案方法の導入でこの限界を大きく超える光強度の数を実証した。本成果は、量子雑音の効果に基づく安全性を高速の通信で実現できることを示している。
 今回、2台の電気デジタル・アナログ変換デバイスの出力を光の領域で多重化して、電気-光変換を行う方法を新たに提案・実証した。マッハツェンダ干渉計によって構成される2つの位相変調部をもつ光強度変調器において、片側の位相変調部(上側)をデジタル・アナログ変換デバイスの粗い分解能の出力信号で駆動する。これに同期して、もう一方の位相変調部(下側)をもう一つのデジタル・アナログ変換デバイスの密な分解能の出力信号で駆動する。それぞれの出力を適切に調整することで、2つのデジタル・アナログ変換デバイスの出力を多重化して、多くの異なる光の強度を生成することができる。2値の粗な信号により2値の光強度をもつ信号が生成される。この2値の光強度それぞれに4値の密な信号による変調が行われ、最終的に8値の光強度をもつ信号が生成できる。(これらの過程は同時に起こるため実際には分離できない)Y-00光通信量子暗号への応用では、より多値の電気信号にて駆動を行い、暗号化する。
 実証実験では、64値と256値の2つのデジタル・アナログ変換を用いて16,384値の光強度をもつY-00光通信量子暗号を10Gbpsの通信速度で発生した。発生した暗号は16,384値の光強度をもつため、その光強度の違いを判別することができない。これは鍵をもたない盗聴者の取得できる情報であり、盗聴行為が困難であることを直感的に示している。これまでの手法で発生できる光強度数は1,024値程度であり、提案方法により16倍の光強度数を実現した。Y-00光通信量子暗号の秘匿効果を定量的に表す指標として、量子雑音がどれだけ多くの異なる光強度を覆うかを示すマスキング量がある。このマスキング量も同様に16倍に向上した。この方法は通信速度に依らず適用できるため、将来的に、10Gbpsを超えるより高い通信速度のY-00光通信量子暗号システムへの拡張が期待できる。
(詳細は、https://www.u-presscenter.jp)