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3Dプリンティング新手法でセンシング機能をロボットに埋め込む

March, 6, 2018, Cambridge--ハーバード大学の研究チームは、自然からヒントを得て、這う、泳ぐ、繊細な物体をつかむ、拍動する心臓をアシストさえするソフトロボットを作製した。しかし、これらのデバイスは、感じたり、周辺世界に反応することはまったくできない。
 それが変わろうとしている。研究成果は、Advanced Materialsに発表された。
 論文の筆頭著者、SEAS院生、Ryan Trubyは「われわれの研究は、ソフトロボット工学における基礎的な進歩である。われわれの製造プラットフォームは、複雑なセンシングモチーフをソフトロボットシステムに簡単に組み込めるようにする」とコメントしている。
 ソフトロボット内にセンサを組み込むことは、難しかった。1つには、ほとんどのセンサ、従来のエレクトロニクスで使われるようなものは、固いからである。この難題に対処するために、研究チームは、有機イオン液体ベースの導電性インクを開発した。これは、ほとんどのソフトロボットを構成するソフトエラストママトリクス内に3Dプリントできる。
 「今日まで、ほとんどのソフトロボットで使用される大部分の組み込みセンサ/アクチュエータシステムは、極めて初歩的なものであった。これらのソフトシステムに直接イオン液体センサをプリントすることで、われわれはデバイスの設計と製造に新たな道を開く。これにより究極的には真のソフトロボット・クローズドループ制御が可能になる」と論文の共著者、Michael Wehnerは説明している。
 デバイスを作製するために、研究チームはJennifer Lewisの研究室で開発された3Dプリンティング技術を利用した。同技術は、エンベッディッド3Dプリンティングとして知られ、多機能、多材料を単一ソフト物体に、シームレスに、迅速に組み込む。
 「この方法の機能と設計の柔軟性は、前例がない。われわれのエンベッディッド3Dプリンティングプロセスと組み合わせたこの新しいインクにより、1つの統合ソフトロボットシステムにソフトセンシングとアクチュエータを組み込むことができる」とTrubyは説明している。
 センサをテストするためにチームは、3つのソフトフィンガー、つまりアクチュエータで構成されるソフトロボットグリッパーをプリントした。研究チームは、膨張圧力、湾曲、接触、温度を感知するグリッパーの能力をテストした。マルチ接触センサを埋込み、グリッパーが光や深部接触を感知できるようにした。
 「ソフトロボットは、一般に、従来の成形技術に制約されており、形状選択が限られる。あるいは商用3Dプリンティングの場合、材料の選択が限られ、これが設計の選択を限定する。Lewis Labで開発された技術は、ロボットの作り方を変革する見込みがある。逐次プロセスから脱し、内蔵センサとアクチュエータで複雑なモノリシックロボットを造る」と研究チームのRobert Woodは説明している。
 次に、研究チームは、マシンラーニング力を生かしてこのデバイスを訓練し、さまざまなサイズ、形状、表面組成、温度を把握できるようにすることを考えている。