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Science/Research 詳細

テラヘルツ波を用いた超高感度バイオケミカルセンサーチップの開発

February, 20, 2018, 大阪--大阪大学レーザ科学研究所斗内研究室 、芹田和則特任研究員、斗内政吉教授らの研究グループは、レーザ光照射により非線形光学結晶から発生するテラヘルツ波を用いて、極微量溶液中の溶質濃度を高感度かつ定量的に検出できる超高感度バイオケミカルセンサーチップを開発した。
 テラヘルツ波は、分子の微弱な運動に作用することから、生命機能に関わる情報を抽出できる電磁波として次世代のバイオセンシング応用に期待されている。しかし、溶液をはじめとするバイオ関連サンプルの計測は、テラヘルツ波の回折限界と水への強い吸収の影響から、高感度・微量・定量測定が困難であり、コンパクトなセンサチップの開発と普及を妨げる要因となっている。
 研究グループは、非線形光学結晶へレーザ光を照射した際に、局所的に生成するテラヘルツ波光源を、数アレイのメタマテリアルおよびマイクロ流路内溶液と効率的に近接相互作用させることにより、流路内の1ナノリットル以下の溶液中に存在する数10フェムトモルの溶質量を検出できるチップを開発した。これは、従来のテラヘルツ波によるマイクロ流路を使った測定と比較して、約100分の1以下の溶液量で1000倍以上の検出感度。
 これにより、蛍光標識なしで様々な生体関連溶液の極微量評価が期待できる。例えば、血液や尿などにわずかに存在するバイオマーカー、インフルエンザウイルス、血中グルコース、DNAなどの検出により、ガンや糖尿病の早期発見や臨床現場での迅速な病理診断への貢献が期待される。また、生きた細胞の生育や化学反応などのリアルタイム観察など、医療・バイオ分野において幅広い波及効果が期待される。
 研究成果は、APL Photonicsに公開された。
(詳細は、http://resou.osaka-u.ac.jp)