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Caltech、新プロセスでナノスケール金属構造を3Dプリンティング

February, 16, 2018, Pasadena--Caltechで開発された新技術により、3Dプリンティングを使って複雑なナノスケール金属構造を作製することが初めて可能になった。
 そのプロセスは,拡張すると、微小な医用インプラント構築からコンピュータチップの3Dロジック回路、超軽量の航空機コンポーネントの設計まで幅広いアプリケーションで使用できる。また、その内部構造に基づいて独自の特徴を持つ新しい種類の材料の実現可能性もある。研究成果は、Nature Communicationsに掲載されている。
 Caltech材料科学者、Julia Greerは、積層造形法(AM)により超微小3Dアーキテクチャの作製の先駆者である。例えば、同氏の研究チームは梁がわずか数nm径の3D格子を作製した。これらの材料は、独特であり、驚くような特性を備えていることがある。研究チームは、圧縮された後に、元の形状に戻る並外れて軽量なセラミックを作製した。
 3Dプリンティングがナノスケールで機能する方法は、高精度レーザが、2つのフォトンで材料の特定の位置にある溶液を照射することである。これにより、液体ポリマを固めて固体にすることができるだけのエネルギーを供給するが、エネルギーは金属を溶かすには十分でない。
「ナノスケール構造作製でわれわれが使うポリマレジンと同じようには金属は光に反応しない。光がポリマと相互作用すると化学反応が生じ、これによってポリマが固化し、特殊な構造が形作られる。金属では、このプロセスは基本的に不可能である」とCaltech工学・応用科学部、医用工学、材料科学、力学教授、Greerは説明している。
 同教授の院生、Andrey Vyatskikhが、あるソリューションを考えついた。主にポリマを含むレジンを造るために、有機配位子(金属に接合する分子)を使う,しかしそれとともに、スカフォールドのように、プリントできる金属も含まれている。
 実験では、Vyatskikhはニッケルと有機分子を結合して咳止めシロップのような液体を造った。コンピュータソフトウエアを使って構造を設計し、その液体に2光子レーザを照射し、その構造を作製した。レーザは、有機分子間の化学結合をより強固にし、それを固めると構造のためのビルディングブロックができる。これらの分子もニッケル原子に結合しているので、ニッケルはその構造に組み込まれている。こうして、研究チームは、最初は金属イオンと非金属、有機分子のブレンドの3D構造をプリントすることができた。
 Vyatskikhは次に、その構造をオブンに入れ、真空チャンバでゆっくりと1000℃まで加熱した。その温度は、ニッケルの融点(1455℃)よりも十分に低いが、構造中の有機材料を蒸発させるには十分であり、後には金属だけが残る。さらに加熱プロセス、熱分解によって、金属粒子を融着させた。
 また、その構造の材料の大量部分を蒸発させたたので,そのサイズは80%縮小した。しかし、その形状と比率は維持された。
 「最終的な収縮は、われわれが非常に小さな構造を実現できた理由の大部分を占める。この論文のために作製した構造では、プリントされた部分の金属梁の直径は、縫い針の先端の約1/1000である」(Vyatskikh)。
 研究チームは、この技術の改良を進めている。現状、論文で報告された構造は、有機材料の蒸発によりボイドが含まれている、また小さな不純物も残っている。この技術が産業利用できるなら、もっと多くの材料を製造できるように拡張する必要がある。研究チームはニッケルで始めたが、業界で一般に使われているが、3D形状で作製することが難しかったり、不可能だったりする他の金属、例えばタングステンやチタンに拡大することに関心を抱いている。また、このプロセスを他の材料、一般的な材料と珍しい材料の両方、例えばセラミック、半導体、圧電材料を3Dプリントするためにも利用することを研究チームは考えている。
(詳細は、www.caltech.edu)