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極細光ファイバで微細構造を3Dプリント

January, 24, 2018, Washington--人の髪の毛ほどに細い光ファイバを使ってレーザベース3Dプリンティングで微細構造が造れることが初めて示された。いずれ、この画期的なアプローチを内視鏡で使って生体適合構造を体内の組織に直接作り込むことができるようになる。これより、組織損傷を修復する新たな方法が可能になる。
 École Polytechnique Fédérale de Lausanneの研究チームリーダー、Paul Delrotは、「さらに開発を進めるとわれわれの技術により、手術中に役立つ内視鏡的微細加工ツールが可能になる。こうしたツールを使ってマイクロ、あるいはナノスケールの3D構造をプリントできる。これらは、損傷組織を修復する人工組織を作るために細胞の接着、成長を容易にする」と説明している。
 Optics Expressに発表された論文で研究チームは、新しいアプローチにより横1.0µm、軸方向(深さ)21.5µmのプリンティング分解能で微細構造が作製できることを示している。この微細構造は顕微鏡スライド上に作製されたが、アプローチは、動物モデルで細胞が様々な微細構造とどのように相互作用するかの研究に役立つ。これは、人に内視鏡プリントする道を開くことになる。
 マイクロ構造を造るために研究チームは光ファイバ端をフォトポリマ液に漬ける。これに特殊な色の光をあてると、固化、硬化する。光ファイバを利用してレーザ光を一点ずつ液体にデジタル的に集光して3Dマイクロ構造を作製する。
 精巧な細部を大きなパーツにプリントすることにより、新しい超コンパクトな微細構造作製ツールは、今日の市販3Dプリンターの有用なアドオンにもなる。これは迅速プロトタイピングから個人化医療器具まであらゆるものに使用できる。「1つのプリンターヘッドを大きなパーツの低解像度に使い、われわれのデバイスを第2プリンターヘッドとして繊細構造に使うことで、マルチ分解能積層造形が実現できる」とDelrotはコメントしている。
 現在のレーザベース微細構造作製技術は非線形光現象、つまり2光子光重合を利用して液体感光性材料内部深くに選択的に塊を硬化する。こうした技術は、生体医療アプリケーションに使うのが難しい。2光子光重合は、複雑で高価なレーザを必要とするからである。このようなレーザは、極短パルスを発し、光のデリバリに大きな光学システムを必要とする。
 特定量の材料を選択的に硬化させるために研究チームは、一定の光強度閾値を超えたところでのみ硬化が起こる化学現象を利用した。光スキャニングパラメータとフォトポリマの挙動を詳細に調べることで、研究チームはこの化学現象を使うためのベストのパラメータを発見した。これにより、低出力で安価な連続光(パルスではない)レーザを使って微細構造をプリントする。
 中空の固い微細構造を造るために、研究チームは、市販の化学成分でできた開始剤を添加した有機ポリマ前駆体を使用した。488nm波長のCWレーザ(細胞にとって潜在的に安全な可視光)を注射器に適合する小さな光ファイバを通して集光した。波面形成アプローチを使用し、研究チームは非常に小さな3D点だけが硬化するように、光をフォトポリマ内部に集光することができた。微細構造作製に先立つキャリブレーションステップにより、研究チームは、極細光ファイバを使い、ファイバを動かすことなく、デジタル的にレーザ光を集光、走査することができた。
 「2光子光重合の先進的システムと比較して、われわれのデバイスはプリンティング分解能は粗いが、細胞の相互作用研究には十分であり、大きな光学システムも高価なパルスレーザも不要である。われわれのアプローチは複雑な光学コンポーネントを必要としないので、現在の内視鏡システムでの利用に適合可能である」とDelrotは説明している。

詳細は、Opt. Express, Volume 26, Issue 2, 1766-1778 (2018).