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ARPA-E、次世代センシング技術開発に助成金

January, 12, 2018, Troy, NY--エネルギー高等研究計画局(ARPA-E)は、15プロジェクトへの1500万ドルの助成金を発表した。
 プロジェクトでは、住宅や商用ビルの冷暖房需要削減により大幅なエネルギー節約を可能にする新たなセンサシステムを開発する。レンセラー工科大学のLESA(Center for Lighting Enabled Systems & Applications)は、ニューメキシコ大学(UNM)、LESA産業パートナーABBとともに、ローコストのプライバシー保護センサ技術開発とテストで協働している。目的は、商用スペースで占有者のカウント、発見、追跡。プロジェクト全体への助成金は3年で237万5000ドル。
 ARPA-Eによると、今日、米国で生産される全エネルギーの約13%が、ビルの冷暖房および空調に使用されている。冷暖房空調設備(HVAC)は、商用ビルの最大エネルギー消費者であり、この領域で使用される全エネルギーの37%を占める。このエネルギーの多くは、人のいない、あるいは部分的にしか占有されていないスペースの冷暖房、過剰空調で浪費されている。正確で信頼できる占有情報がないために、既存のビルオートメーションや制御システムは、HVACエネルギー利用の大幅削減で制約を受けている。
 ARPA-EのSENSOR(Saving Energy Nationwide in Structures with Occupancy Recognition)プログラムは、画期的で非常に正確な在席センサおよび占有者カウンタをサポートしており、これによってビルのHVACが最適化され、コスト削減、エネルギー利用の減少が実現する。
 LESAディレクタ、レンセラー工科大学の電気,コンピュータ、システム工学教授でもあるRobert F. Karlicek Jr.は、ARPA-Eの受注について「LESAは基礎研究に基づいて、スペースから反射されるデジタル化された光の力がプライバシーを保護する、占有および行動データを生成する」と語っている。「このプログラムでは、LESAチームは、同社の照明ツールキットコンセプトをビルのエネルギー効率改善に適用するが、これはデジタル化された照明が、スマートビルディング、ヘルスケア、園芸、新しい5Gワイヤレス通信、認知環境のためのどんなIoTプラットフォームでもいかに重要な部分になるかということの出発点に過ぎない」と同氏は話している。
 その技術は、距離マッピングに高効率、ローパワー赤外LEDsとフォトダイオードしか使わない。これでプライバシーが保護され、ビルのどこでも使用可能である。この技術を使ったプロトタイプ占有センシングの研究は、冷暖房のエネルギーコストが、必要とされる時と場所に適切な温度の空気を供給するビルの管理システムに教え込むことで最大30%削減可能であることを示唆している。データは、ビルの利用とセキュリティマネージャにとって貴重なものとなり、新しいエネルギー効率のよいスマートビルディングシステム、およびサービスの導入を簡素化する。
 Karlicekによると、そのセンサは,以前にLESAが開発したIRベース TOF距離測技術を大幅に拡大する。新しいTOFセンサシステムは、特許となっているプレノプティク(現場から生ずるライトフィールドについての情報を捉えるライトフィールド)ディテクタ技術を利用する。これは、LESA学術パートナーUNMが開発したものであり、レンセラー工科大学のLESAオプトエレクトロニック照明と通信チームが開発した付加的センサ信号処理回路を統合する。
「微小な、ローコストTOFセンサアレイは、照明フィクスチャに組み込み可能であり、天井にインストールできる。さらに、空間に分散した複数のセンサがまばらなネットワークを形成し、距離情報を得るために空間全体をスキャンして占有者の正確な数、位置、動きをマッピングする。個人の特定では、センサは空間における人の存在だけを登録するので、プライバシーは保護される」。
 UNMは、独自開発のユニークな集積光技術を使い空間的に分離されたマルチTOF信号を供給するセンサアレイ開発に取り組んでいる。同技術は、スペクトルおよび角度フィルタとしてグレーティング結合導波路を利用している。入力結合域は、独自のプレノプティクセンサとなるシリコン検出域から離されている。これにより、比類のないスペクトルと角度分解能が得られ、同時にローコストを確実にする成熟したシリコンIC製造技術に適合している。
 研究チームによると、センサネットワークからのデータは動作と位置情報を使って、その場所の人の数を極めて正確に保持し、センサ間を移動すると一時的に見失うかも知れない人々を特殊アルゴリズムを使って追跡する。したがって、必要なセンサ数は少なくなる。新しいTOFイメージ処理アルゴリズムは、LESAのイメージ処理と制御グループがレンセラーで開発した現在のTOFセンシング技術を拡大するものである。目的は、レンセラーとUNM合同チームが開発するプレノプティクTOF ICの新機能の活用である。
 占有データは、次にビルの制御システムに送られ、ビルの効率を最大化するために、HVACエネルギー消費を管理する。目標は、合理的なコストで最適な快適性を提供することである。
(詳細は、www.rpi.edu)