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X線顕微鏡の解像度を記録的に高める新レンズ

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December, 18, 2017, Hamburg--ドイツ電子シンクロトロン(DESY)の研究チームは、ナノメートル範囲の記録的な解像度のX線顕微鏡を可能にする斬新なレンズを開発した。新材料を使い、研究チームは、特殊X線オプティクスの設計を完成し、10nm以下の焦点スポットサイズ径を達成した。
 研究成果は、Light: Science and Applicationsに発表された。研究チームは、そのレンズを使って介与プランクトンサンプルを撮像した。
 現代の粒子加速器は、超高輝度、高品質X線ビームを生成する。短波長で貫通性のあるX線は、複合材料の顕微研究に理想的である。しかし、こうした特性を十分に活用するには、X線領域で非常に効率的で、ほぼ完璧なオプティクスが必要になる。世界中で大規模に研究されているが、これは予想以上に困難なことが明らかになっており、10nm以下の解像度のX線顕微鏡の実現は、まだ大変難しい。
 類例のない特徴のためにX線は、可視光と同じように簡単に集光できない。1つの方法は特殊なX線オプティクス、多層Laueレンズ(MLL)の利用である。このようなレンズは、ナノメートル厚の2つの異なる材料の交替層で構成されている。これは、スパッタ蒸着というコーティングプロセスで造られる。従来のオプティクスと対照的に、MLLは光を屈折させないが、入射X線を回折させ、ビームを小さな点に集光させることで機能する。これを達成するためには、材料の層厚は正確に制御されなければならない。層は、レンズを通して、厚さと方向が徐々に変化しなければならない。焦点サイズは、MLL構造の最小層厚に比例する。
 求められる精度を達成するために、CFELの研究者 Saša Bajtは、新しい製造プロセスと、層厚により変わることが多い材料特性の詳細な理解とを統合した。新しいレンズは、新しい材料の組合せ,タングステンカーバイドとシリコンカーバイドの10000以上の交替層でできている。「適切な材料ペアの選択は、成功の決め手になる。他の材料の組合せを排除しないが、これは現在われわれが知っているベストであることは言うまでもない」。
 垂直と水平方向でX線ビームを集光するには、ビームは2つの垂直方向のレンズを透過しなければならない。この設定を使うことにより、スポットサイズ8.4nm×6.8nmが、米国Brookhaven国立研究所NSLSのHard X-ray Nanoprobe実験ステーションで計測された。焦点サイズは、X線顕微鏡の解像度を決めるものである。新しいレンズのソリューションは、一般的な先端レンズで達成可能な解像度よりも約5倍優れている。
 貫通性のためにX線は普通は、レンズ材料を透過する。そのような線が集光に寄与しないことは明らかであるので、長期目標は、X線との相互作用を強めるレンズ構造を造り出し、高い割合を焦点に向けることであった。新しいレンズの効率は、80%を上回る。この高効率は、レンズを造る層化された構造によって達成されている。これが、X線の回折を制御する人工結晶のように機能する。
 ここで達成された高効率は、必要なナノメートル構造の製造で極めて高いレベルのコントロールを実証している。この精度により、新しいレンズのテストで実証されたように、広い範囲の倍率で画像投影が可能になる。DESYのX線光源PETRA ⅢのビームラインP11で研究チームは、Acanthareaの高解像度ホログラムを作成した。これは海洋プランクトンに属する単細胞Radiolariaであり、鉱物硫酸ストロンチウム(SrSO4)、つまり天青石の骨格を形成することで知られている唯一の生命体である。
 論文の共著者、Alfred Wegener InstituteのChristian Hammは、「新しいX線オプティクスにより、これらナノ構造を3D撮像することが、いずれ可能になる。これによりわれわれは、これらのシェルの高い機械性能のモデル化と理解が可能になり、新しい環境に優しい高性能な材料の開発に役立つ」とコメントしている。
 新しいレンズは、ナノ分解能イメージングや分光計測を含む幅広いアプリケーションで使用可能である。
(詳細は、www.desy.de)